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2008'06.23 (Mon)

「ヨーグルトではなく…そう、ケフィアと呼ぶべきか。」 第六章


【More・・・】

「ねぇパパ。なんでハワイなの?」

「いやいや!だってな!ほら、あれだ!母さんがフラダンス好きだろ!」

「何言ってるの、お父さん。私は付き添いでやってるだけ。フラにはまってるのはあなたでしょ?」

「それよりも早く要点だけ掻い摘んで説明して頂きたい。」

「同意です。」

「てめぇに言ってんじゃねぇ!
 あ、素子ちゃんに言ったわけじゃないからね~。じいじは恐くないからね~。」


☆のんびり主婦のゆったりブログ日記☆

題名:そうだ。ハワイに行こう。               2038年7月22日

題名が意味不明だと思われた方、すみません。
ハワイに行くのは私ではなくてパパとママです。
いや、行くじゃなくて、住むそうです!永住するそうです!
あー!訳わかんない!!
「老後はハワイでゆっくり過ごすのが夢なの♪」って小さい頃から聞いてたけど
…まさかここまで本気だったとは。
だってパパかなりハワイ好きだもん。
二年に一度はハワイに行くし。現地に友達出来てるし。男なのにフラ習うし。
「フラを極めるためハワイに飛行機でフライト」ってやかましいわ!全然うまくないわ!



「退職金は俺の好きなように遣わせて欲しい、って言うからその通りにしたんだけど。
 …まさかハワイに家を買っちゃうなんて、ねぇ。」

冷房が効いた茶の間で冷たい麦茶を飲みながら、
私はパパとママの話を呆れながら耳を傾けていた。
二重に仕切らた窓の外からは、夏の終わりを告げるひぐらしの鳴き声が聞こえる。
この街は駅前からどこまでも真っ直ぐ続く大通りを挟むように
民家やマンションが集結しているのが一番の特徴だが、
大通りから少しでも外れるとすぐに緑が覆い茂る森林が現れる。
以前は道路のすぐ脇が森だったらしいが、市がこの地区の大地主と結託をして
住宅地化を誘致したため、だいぶ広範囲の森林伐採が行われたが、
幸い住宅建築ラッシュの波は飽和状態を保っているらしく、
ここ十年近くは一度も森を傷つけていないようだ。
話に聞くと旦那の実家も元を質せばここら一帯の地主だったらしく、
建築ラッシュの際に得た莫大な利益で今の研究所を構えた、と聞いた。
そんなわけで、近所では周りに比べると比較的新参者なうちの実家は、
必然的に大通りから遠く森に近い位置に居を構えている。
なので年柄年中、虫や野鳥の鳴き声に欠く事がない。
最も虫嫌いな私にしてみれば有り難い事など何一つありはしないのだが。
ただ、窓から聞こえてくる虫の鳴き声で、季節の変わり目を知る習慣は自然と身に付いた。
あと数週間もすれば、夜は鈴虫や松虫の合唱がこだましてくるだろう。
その後は…一番苦手とする蛙の学芸会が予定されているはずである。
この家を出て良かった事の一つは、そんな喧しい虫の鳴き声を聞かずに済む、ということくらいか。
少し寂しい気もするが、うるさいものはうるさい。嫌なものは嫌なのだ。
まぁ、もっとも我が家は、音も立てずに黙々と作業をする蟻のような人物が
二人もいるので静か過ぎるくらいだが…。

「退職金っていうのは男が四十年間、文句も言わずに一生懸命頑張ったご褒美だ。
 ちょっとくらい好きに遣ってもいいだろ?」

窓の外から流れてくるひぐらしのコーラスから意識を目の前に戻すと、
パパは腕を組んで満足そうに言った。その隣でママは頬に手を当て溜め息をつく。
しかし、その顔はどことなくパパ同様に満足気だ。

「それにしたって、一体いつからハワイの家を買う計画をしていたのよ。
 どうせ近所に住んでるんだし、ちょっとくらいは相談してくれてもいいんじゃない?」

パパとママのほころんだ笑顔を見るのは娘としてやっぱり嬉しい。
だけど、それとこれとは話が別だ。
違う家には住んでいるけど、戸籍上は旦那や素子も含め私達も家族なんだから。

「いやな、ハワイに住むのはパパにとって長年の夢だったんだ。
 きちんと形になってからお前達に説明しようと思ったんだよ。
 そもそもパパがハワイが好きになったきっかけというのがだな…」

どういう意思を表しているのかさっぱりわからない身振り手振りを加えながら、
ハワイに対する情熱を熱く語るパパ。
よっぽど嬉しくて舞い上がっているのか、私の質問にまともに回答する気がないようだ。
どうしたものかと呆然としていたら、隣で苦笑いを浮かべたママがきちんと頭から説明をし始めた。

「なんでも、ハワイの移住者向け住宅地への入居者募集抽選会っていうのがあって、
 お父さんずっと狙っていたんだって。
 それで私にも相談せずに抽選に参加して、当選しちゃったみたいなのよ。
 …まったく、いつも肝心なところは自分勝手なんだから。」

「倍率なんと200倍!」

ピースサインを目の前に突き出し、誇らしげに鼻を鳴らすパパ。
優しくて屈託のない性格のパパは、家の中でも外に出てもいつも微笑んでいる人だった。
よっぽど嬉しいのだろう。そんなパパが子供のようにはしゃぐ姿を見て、私も自然と顔がほころぶ。
いつも無愛想な二人に囲まれて生活しているせいか、今日は特に陽気に感じてしまう。
そんな無口、無愛想、無感動、三無い親子はそこの空間だけ時間が止まったかと
心配してしまいたくなるくらい、ピクリとも動かずにただ話を聞いている。
いや、聞いているのか?

「それで、いつからあっちに住むの?」

「建物の登記移行やらビザの手続きやら色々と事務処理をやっつけないといけないらしくてね。
 実際に引っ越して向こうに住み始められるのは、…1ヶ月後かな?」

国と国を跨いでの引っ越しだ。やっぱりそんな簡単にはいかないようだ。
近所で徒歩五分ほど離れた家に引っ越すのとは訳が違う。
それでもあの時は引っ越すって面倒だな、と思ったが
外国へとなれば想像もつかないくらい大変なのだろう。
だから「引っ越しの時には手伝うから呼んでね」というセリフは自然に口から出た。
パパとママを思う純粋な私の気持ちだった。
私の言葉にパパとママは、先程までとは違う種類の笑顔を浮かべて微笑んだ。
慈愛に満ちた表情、とでもいうべきか。私は小さい頃からこの笑顔に挟まれて育ってきた。
今は私も人の親になり、離れて暮らしているがたまに帰ってきてパパとママの笑顔を見ると、
柔らかい羽毛の中にいるような安心感を覚える。
そして素子にもこんな気持ちを与えられるような親になろうと、胸の中で小さく呟く。

そんな思いを込めて隣に座る娘に、私なりの愛情をたっぷりこめた笑顔を向けてみた。
横からの視線を感じた娘は、力強い光を放つ瞳を大きく見開き、私に顔を向けた。
私はテレパシーを送るように心の中で何度も「笑えー。笑えー。」と唱えたが、
数秒間無言で凝視していた娘の答えは、首を小さく傾げただけだった。
やはり母親だけが微笑んでも意味がない。
父親と二人で笑顔をむけてこそ、子供というものは愛情を理解し
初めてその喜びを表面に表すものである。
つまり、素子が無表情なのはあなたのせいよ!と娘の隣にいる旦那を睨みつけたが、
彼も娘同様にしばらく私を見つめた後、小首を傾げた。
やっぱり親子だよ、あんたら。

そんな無表情と満面の作り笑顔で対峙する私達を見て、
苦笑いのまま咳払いを一つついた後、ママは夕飯の献立でも尋ねるように聞いてきた。

「それでね、お父さんがあなた達にも新しいお家を見てもらいたいらしくて。
 再来週にでもハワイに行かない?」

にこやかにゆっくりだが声を弾ませて話すママの横で、腕を組んだパパは大きく一度だけ頷いた。
随分唐突な話だが、我が家では二年に一回くらいの割合で
ハワイ旅行に行くのが通例になっている。
おそらくディズニーランドに行くよりハワイに行く機会が多いだろう。
まるで国内旅行にでも行くかのような感覚だ。うちではそれだけハワイは身近な存在になっている。
なので私も他意無く「良いんじゃない?」と言った後に、
旦那と娘のパスポート有効期限を頭の中で確認したくらいだ。
しかし、私の返事を聞いた後に仏頂面コンビが揃って目を逸らした。
その顔を注意深く観察すると「げんなり」という効果音が聞こえてきそうな表情が窺える。
旦那の研究所の関係で別々の家には暮らしているものの、
彼と素子だってパパとママの大事な家族だった。
なので毎回のハワイ旅行にはもちろん二人も同行している。
しかし、研究の事以外には全く積極性を持ち合わせていない二人にとって
我が家の通例行事は、少々苦痛を伴うらしい。
口にこそ出さないが、明らかにいつもよりテンションが低めなのが明白なのである。
私は物心を着く前からハワイに馴染んでいるので、もはや第二の故郷と言っても過言ではない。
現地に行けばサーフィンを楽しんだり、地元の同世代の子達とビーチバレーで遊んだり、
街中をウィンドウショッピングしたり、時間があればスキューバダイビングを楽しんだりする。
しかし一方、色白で不健康が服を着て歩いているような二人と言えば
、ビーチの木陰でトランクいっぱいに詰め込んだ分厚い本を黙々と読んでいるだけなのである。
いくら遊びに誘っても、二人仲良く首を横に振るだけ。
だいたい三~四日の滞在期間をまるっと読書で完遂するのだった。
なのでこの二人にしてみたら、クーラーの効いた研究所から引っ張り出され、
わざわざ真夏なのに更に暑い所に連れて行かされるという、
至極迷惑千万な家中行事なのであろう。
そんな様子にママも感づいているのか、「あなた達はどうする?」と気を回して伺ってくる。
しかし二人のどちらかが反応を示す前に私が「もちろん行くわ!」と遮ってしまう。
一瞬浮かびかけた旦那の表情がすぐに意気消沈したが、私は気にしない。
何であれ旦那は我が家に嫁いできた身なので、
嫌々でも長い時間を掛けてこちらの慣習に慣れるべきである。
それに一年前に素子に『当たり前を知れ。』と、仰々しく言った本人自らが
当たり前らしい家族旅行を拒んでどうする?

…あれ、二年に一度のハワイ旅行って、普通か?

…普通だよね!セレブな家なら!

そんな事を自分に言い聞かせ、
「別に素子ちゃんだけでいいんだけどね~。」と嫌みを言うパパを睨み付けて、
新しい住居の下見兼、我が家の恒例行事となるハワイ旅行の計画が始まった。






「へくちっ!」

「こら素子。あなたまだ風邪が治ってないでしょ?ゆっくり寝てなさい。」

「ずずっ。体調に関しては多少微熱があるものの問題はありません。
 それよりも醗酵抑制物質の抽出作業をしなければ。…へくちっ!」

「ほらほら、何が全然大丈夫なのよ。まだくしゃみが止まらないじゃない。
 いいから寝てなさい。」

「しかし…。醗酵抑制物質の無限増殖デバイス解明まで後少しなのです。
 寝ている余裕などありません。…へくちっ!へ、へくちっ!」

「二連続でくしゃみ出てるでしょうが。駄目です。研究は風邪が完治してからにしなさいね。」

「うぅ…しかし。」

「あとであなたの好きなチキングラタン作ってあげるから。まずは寝てなさい、ね?」

「…了解です。」




☆のんびり主婦のゆったりブログ日記☆


題名:素子、風邪治らず。               2038年9月15日

ハワイから戻ってきて早二週間。
熱はなんとか引いたものの、まだ鼻水が止まらずボォ~としている様子です。
風邪を引くこと自体珍しい子なんでママとしては心配なんだけど、
本人は研究を手伝いたくてうずうずしちゃってます。
もう、本当に研究馬鹿なんだから…。
それと皆様からのお見舞いコメント、本当にありがとうございます!!
いつもいつもすみません。励みになります><



あからさまに嫌がる態度を示す旦那と娘を無理矢理連れて行き、
パパとママの新居を見に行くため、私達は約一ヶ月前、ハワイへ旅立った。
すでに馴染みとなったホノルル空港のゲートを抜け、南国の空気を吸い込む。
風の匂いも、湿度の低いカラッとした空気も、何処からか流れてくるハワイアンのメロディーも、
全てが私の大好きな空間だった。
南国の香りを五感で感じると、胸がワクワクして止まらない。
すぐにでも着替えてビーチに飛んでいきたい衝動に駆られるが、
今回の目的は新居の見学だけではなく家電や家具の買い出しも含まれている。
なので遊べる時間は限られるが、それでもここの空気を肌で感じるだけで充分満足だ。
道行く現地の人が気軽に挨拶を交わしてくるので、私も大きく手を振って返してやる。
まるで修学旅行の女学生のようにはしゃいでいたが、
振り返ると大きいスーツケースを椅子代わりにして黙々と本を読む旦那と娘の姿を見て、
私は額に手を当て深い溜め息を付いた。
毎度の事ではあるが、この二人にハワイを楽しもうという気はさらさらない。
そんな事は端っからキャンセルである。
せっかく陽気な南国の日差しを浴びているというのに、
この二人は何故こんなに陰気なのだろうか?
紫外線予防なのか、はたまた太陽光線が苦手なのか、
空港ゲートに植えられた椰子の木の日陰で、ピクリとも動かずに本を読む旦那と娘見て、
私はもう一度大きく溜め息をついた。
わざと聞こえるようにやったのだが、本に集中しているのか、
無視したのか、こちらを見ようともしない。
少々腹立たしいが、まぁ良い。
実は今回、私はある計画を企てていた。
旦那は別にいいとして、素子はまだ若いんだし色んな楽しい事を知ってもらいたい。
明日は楽しみにしてなさいよ、と一人で勝手にほくそ笑んでいると、
新居まで案内してくれる車の手配が整ったのか、ママが私達を呼びに来た。


「…これは何ですか。」

「これはウェットスーツです。」

「…ではこれは何ですか。」

「これはボディーボードです。」

ここは浜から流れてくる潮騒が窓から直接聞こえてくるビーチのすぐ側に建築されたホテルの一室。
日本語学校の教本のような会話を交わした私と娘の前にあるのは、
シンプルなデザインのウェットスーツとボディーボードだ。
素子は眉間にシワを寄せ、ウェットスーツを持ち上げ横に縦に引っ張ってみる。
そして足元に横たわるボディーボードを一瞥すると、
手に持ったウェットスーツをボードの上に投げ捨てた。
私は慌ててそれを拾い上げると、娘の体にあてがってみる。

「ほらほら素子!よく見てご覧なさい!すんごく似合うじゃない!
 もうね、アレよ!サーファーみたい!ママ、素子がこれを着たところを見てみたい!」

ハワイに来て二日目。初日は新居の下見に買い物に事務手続きにと、
パパとママだけじゃなくて私も慌ただしく過ごしたが、
一日いっぱい動いたためやるべき事は大体終わった。
なので後は細かいところは両親に任せて、私達は南国リゾートを満喫する事にした。

ウェットスーツを娘にあてがったまま、鏡の前に引っ張っていく。
明らかに不機嫌そうな娘の顔はわざと見ないように私は言葉を続けた。
うーん、こう言ってはなんだけど、やっぱり貧相な体にはちょっと似合わないな。

「だって素子ってば、ハワイに来てもいつも本読んでばっかりじゃない?
 だからね、少しはママと一緒に遊んでくれてもいいんじゃないかなぁ、って。
 サーフィンは難しいけどボディーボードなら初心者でも楽しめるから!やってみない?」

「興味がありません。」

私の腕をすり抜け、ベッドの上にある本へと手を伸ばそうとした娘を、私は強引に引き寄せた。
娘は抗う訳ではないが、酷く迷惑そうな顔を私に向けた。
いつもより強烈な光を放つ眼力ビームが痛いが、私も今回だけは退くわけにはいかない。
だって子供用のウェットスーツにボディーボードのレンタル代、結構高かったんだもん。

「ちょっとは研究や読書以外の事にも興味を示してみなさい!
 やってみれば楽しいのかもしれないじゃない?それにねぇ、
 あなたの体、ちょっと貧弱過ぎるわよ?
 少しは運動もして体力をつけないと長時間の研究とか辛くなるのよ。
 ねぇ、パパ?」

ソファーに座り、ここにきてから既に三冊目にはなるだろう分厚い本を
読んでいる旦那に同意を求める。
中学二年生になって多感な時期に入った素子は、最近私に反抗的になってきた。
精神面が正常に育っている証拠だとわかっていても、親としてはやっぱり寂しい。
だが、同じ科学者としてか、性格が似通っているからか、
素子は旦那の言うことには素直に服従する。
嫌がる素子をなんとか説得したいがために話を振ったのだが、
私の期待を余所に、旦那は無視を決め込んだ。
そんな様子を見て、私の腕から逃れようとする素子をがっちり握り締め直した。

「だからね、そういう風に普通の遊びをしてみるのも悪くはないと思うのよね。
 それにさ、前にパパから言われたでしょ?『当たり前を知れ』って。」

娘の眉がぴくりと反応した。どうやらこの一言が素子にとって弁慶の泣き所らしい。
素直で実直な性格がチャームポイントな娘は、一度約束したことは絶対に破らないし
軍人並にルールを従事する。旦那に以前言われた『当たり前を知れ』という約束は
彼女にとって絶対に解けない鎖なのだ。それに例の賭け事の件もあるしね…。

「…お母様がそこまで言うのならば了解致しました。やります。」

「本当に!?ありがとう素子!!」

相変わらず眉間に刻まれた皺はそのままだが、やっぱり素子は素子で、
この子も私にはまだまだ敵わないようだ。ママをなめるなよ?
旦那を見ると、ちょぴり不機嫌そうな顔で本を眺めている。
自己満足のために自分との約束まで引用して言葉巧みに
素子を口説いたのが気に入らない、と言わんばかりの顔だ。
そんな旦那の様子に微かな罪悪感を感じたが、出来る事ならば素子のためだと解釈してもらいたい。
あなたのようにあんまり貧弱だと『当たり前を知る』ことの障害になるかも、でしょ?
そんな自分自身に都合が良い解釈を頭の中で考えながら、
私はソファーにオブジェのように座る旦那に声を掛けた。

「あの~、パパ?私達これから着替えるんだけど?」

返事が無い。本に集中しているはずはないのに無視するとは何事だ。

「聞えている?私達これから着替えるって言ったんですけど?」

「…聞えている。それがどうかしたのか。」

もう一度声を掛けた私に対して、やっと面倒臭そうに返事を返した旦那。
私は手近にあったクッションを振りかぶり、旦那目掛けて投げつけた。

「出てけーーー!!!!」

クッションは見事に旦那の顔面にクリーンヒットした。
羽毛だけで出来た柔らかいクッションだったのでそんなに痛くはないはずだけど、
しばらく顔にへばり付いていたクッションがゆっくり地面に
落ち、その中から眉間に皺を寄せた不満そうな旦那の表情が現れた。
ちょっとやり過ぎたか?これは怒られるかな?と思ったが、旦那は何も言わず
本をたたむと足音も立てずに部屋から出て行った。
少し悪いことをしたかな、と旦那の後ろ姿を見て反省したがすぐに気を取り直して
ウェットスーツを手に持つ娘に向き直った。
今の私はすこぶる機嫌が良く脳内アドレナリンが出っ放しなので、
鉄面皮でロボットのような旦那を省みている暇はない。
というか、旦那もデリカシーがなさ過ぎる。
自分の方こそもう少し当たり前なことを知るべきである。

「さて、じゃあ素子、着替えようか?ママが手伝ってあげるから♪」

気を取り直して素子の着替えを手伝ってあげようと娘に手を伸ばしたが、
娘はその手を払いのけ、自分からノースリーブのシャツを脱ぎ始めた。

「ご心配に及びません。自分で出来ます。」


せっかく女の子同士で楽しもうと思ったのに、と残念に思いながら目の前にいる娘が洋服を
脱いでいく姿を見ていたが、ノースリーブの下に着ていたキャミソールを脱いだ時、
私は「おや?」っと思い、目を見張った。

「…素子。最近成長している?」

「…何が、でしょうか?」

ほとんど上半身裸の娘は、私の言葉の真意を図れず、小首を傾げた。
色白で絹の様な滑らかな肌に、女性特有の起伏がはっきりと露になっていた。
普段は不可解な時に現れる小首を傾げる癖だったが、この状態で見せられると
ちょっぴり艶っぽく見えなくもない。
身体の造りだけは私に似たのか、娘は年齢の割りに一回りも二回りも小柄な身体だった。
一緒にお風呂に入ることもなかったので、
こんなところまでいちいち確認をする時がなかったのだが、
身長はともかく他のパーツは順調に成育しているようだ。

「あなた、下着がきつかったりしなかったの?」

「うむ。そう言われてみると胸部への圧迫感が気になっておりました。」

「…日本に帰ったら、新しいの買って上げるからね。」

生返事を返す娘を見ながら、私はつい目線を自分の胸元に落とした。
そして微かな落胆を覚えた後、性格だけではなくて肉体もグラマラスなお義姉さんを思い出した。
遺伝というものは、どうやら身体全体ではなくて顔や脳みそや胸やらのパーツレベルで
区分されるらしい。私が娘に遺せたモノと言えば、低い身長と性別くらいか…。

いつの間にか全身の衣服を脱いだ娘がウェットスーツを身にまとっている。

「これで宜しいのですか?」

「あ、あぁ。もう着ちゃったのね。えぇっとね、ここのタグを締め過ぎると中に水が入らないから…。」

私は下らない妄想を捨て去り、娘のウェットスーツを着る手伝いをする。
もしかして、私の身体が貧相だからなかなか素子に兄弟が出来ないのかしら?
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06:00  |  「ヨーグルト…。…いいえ、ケフィアです!」  |  CM(13)  |  EDIT   このページの上へ

Comment

どもです^^何度もコメなしでぐぐったり何やらしてしまって申し訳ありません;;訪問ありがとうございますっ


第6章(だけ)読ませていただきました^^^パパさんは、ハワイに住むのが夢だったんですね。。。ほほほh喜ばしいこと(黙r
水街遜☆ | 2008年06月23日(月) 15:37 | URL | コメント編集

天壌の蒼響改め蒼響黎夜です
やっとリンク追加しました、お待たせです
毎度クリックしてもらってますのでこちらからも♪
蒼響黎夜 | 2008年06月23日(月) 20:32 | URL | コメント編集

>>水街遜☆さん
どうもお越し頂きましてありがとうございます♪
第六章だけと言わず最初から見てみて下さいな☆

>>蒼響黎夜さん
リンクありがとうございます!
なんか変な催促してしまったみたいで申し訳ないです。
またちょくちょく遊びに行きますね♪
要人(かなめびと) | 2008年06月23日(月) 23:09 | URL | コメント編集

こんにちは♪

私・・・ハワイに住むのが夢です
すべてのしがらみを捨てて!!笑
叶いそうもありませんがw
もー | 2008年06月24日(火) 11:46 | URL | コメント編集

ハワイ行きたくなっちゃいましたww
二年に一度のハワイ旅行はセレブです^^;
庶民の家庭ではありえませんね笑
しょうがないこととは思いますが、
この先を考えるとですね…><
う~ん、がんばってください!!応援ポチ♪
momokazura | 2008年06月24日(火) 20:09 | URL | コメント編集

>>もーさん
やっぱりハワイに住みたいって人、少なくないんでしょね。まぁ、一度も行った時ありませんが><

>>momokazuraさん
やっぱり一度は行ってみたいですね、ハワイ!!
この先のことは・・・今は忘れてあげて下さい。
要人(かなめびと) | 2008年06月25日(水) 05:18 | URL | コメント編集

こんにちは!
この前アドバイスいただいたので、特殊相対性理論の勉強してみました!それでヨーグルトのエネルギー計算してみたんですけど、理論上はケフィアはできそうですね。後は発酵抑制物質と発酵促進物質の発見を科学者の方々に期待するだけですね。楽しみです。
また長々とすみません。続きを楽しみにしつつ、相対性理論の勉強していきます。
四葉 | 2008年06月26日(木) 19:53 | URL | コメント編集

>>四葉さん
えぇ!!理論上可能だったんですか!?
もちろん、そこまで計算に入れてケフィアの物語を書いてます。
そうですね、昔話編はそろそろ終わりにして続きも進めます。
お互い真理の探求に邁進致しましょう♪
要人(かなめびと) | 2008年06月27日(金) 06:47 | URL | コメント編集

うん・・・。

何か、家族って幸せの源だね・・・♪
(楓´∀`) | 2008年06月28日(土) 11:38 | URL | コメント編集

>>(楓´∀`)さん
私も人の親になりつくづく実感しております。
要人(かなめびと) | 2008年06月29日(日) 00:31 | URL | コメント編集

ひさかたぶりに来たら結構進んでますねwww
誤字がちらほら…

いやいや、それより母上はねらーの匂いがするのですがどういう事ですか
そして素子たんのくしゃみかぁいよーぅおっもちかえりぃ

支離滅裂サーセンwwwww
八頭身派 | 2008年06月29日(日) 01:57 | URL | コメント編集

年月とともに旦那さんへの雑な扱いが
おかしいやら物悲しいやら^^;
哀愁をさそいます笑、応援ぽち♪
momokazura | 2008年06月29日(日) 15:00 | URL | コメント編集

>>八頭身派さん
お久しぶりです♪
主婦って案外ヒマなんですよ。なので日中はネラーです。
主に在住する板はサロン板とオカルト板だそうです。

>>momokazuraさん
いつまでもラブラブっていうのも難しいですからね。
雑な扱いも一つのスパイスってことで♪
要人(かなめびと) | 2008年06月30日(月) 19:28 | URL | コメント編集

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