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2008'06.15 (Sun)

「ヨーグルトではなく…そう、ケフィアと呼ぶべきか。」 第四章


【More・・・】

「ジャジャーン!ボンジュール!みんな元気にしてた!?」

「ぶほぉっ!ちょっと、お義姉さん!びっくりさせないで下さい!どうしたんですか急に!?」

「うるさいよ。姉貴。」

「Bonjour. Tante。(こんにちは。おばさま。)」

「素子?今、なんて言ったの?それってフランス語?」

「merveilleux!. Il est venu être capable de parler français à?
   (すばらしい!いつのまにフランス語が話せるようになったの?)」

「Parce que vous avez mis le dictionnaire auparavant. Et, il a étudié.
  (あなたが以前辞書を置いていったので。それで勉強しました。)」

「Parce que français est de façon inattendue facile, c'est.. devenir il....
  (フランス語は意外と簡単だからな。)」

「ちょっとあなたまでフランス語で話さないでよ。私だけ訳わかんないじゃない。」




☆のんびり主婦のゆったりブログ日記☆


題名:自分、純国産ですから…。             2037年2月18日

今日、突然また例の義姉さんがやって来た。
なんでいつも突然来るの!?しかも毎回夕飯時!?
そういう時に限ってさ、結構手抜きなメニューだったりするんだよねぇ。

それはそうと、娘がフランス語を喋っていた!
旦那もフランス語を喋っていた!
何?最近はフランス語を喋るのがブームなの?
来年から通う中学ではフランス語が必須科目になったのかしら。
…って、そんな事あるか(暴)!




ドアが壊れるんじゃないかと思う程の勢いで闖入してきたのは、
私より四つは年上の旦那のお姉さん。素子から見れば伯母さんにあたる人だ。
だいたい六年程前からフランスに一人で暮らしているが、
今日みたいに時々、連絡も無しに訪ねてくる。
まぁ、訪ねるも何もここがお義姉さんにとって実家なので、いつ帰って来ようが構わないのだが。
ただ、来るんなら来るで連絡の一つくらいは入れて欲しい、主婦としては。
そんな私にお構いなしに、お義姉さんは食卓に座ると
大きめのハンドバックからお土産を取り出し、並べ始めている。
お菓子やら置物やら香水やらワインやら本やら…。
毎回毎回、おびただしい量のお土産を持ってくるので、
我が家の居間はフランス土産で埋め尽くされている。
うわ、これでエッフェル塔は五本目だ!
お土産の整理が終わると、お義姉さんはワインを手に持ち、グラスを催促する。

「再開を祝って乾杯しましょー!」

私はキッチンに戻り、いそいそとグラスの準備をする。
他のお土産はウンザリするけど、ワインは大好物なんだな、これが。
毎回ワインだけ持ってきてくれればどれだけ嬉しいことか。
いつの間にかコルクをこじ開けたのか、
抜栓をしたワインを私が持ってきたグラスに並々と注いでいく。

「それでは!家族の健康を祈って!カンパーイ!!」

大柄な体にウェーブが掛かった長い髪をかき分け、盛大にワインを飲み干すお義姉さん。
そのライオンを彷彿させるような出で立ちの彼女が、私は少し苦手だった。

「ところで姉貴。フランス支部での研究の進捗状況は如何か。」

それまでは目尻に皺を寄せ、大きく口を開けて豪快に笑っていたお義姉さんは、
旦那の問い掛けを聞くやいなや、急に笑顔を消し去り無表情になってしまった。
その両目は、この親族特有の見るもの全てを射抜くほど強烈な光を携えていたが、
この人の目は旦那や娘の瞳とは少し違っていた。
どこか寂しいような、悲壮感を奥に秘めた瞳だった。

私の幼い頃の記憶では、お義姉さんは今と違い、清楚で大人しい女性だった。
髪を真っ直ぐに伸ばし、目立たないように静かに微笑む様子は、
小さい頃の私には理想のお姉さんに映った。
スラッと伸びた細身に整った顔立ちで成績優秀の才色兼備だったので、
近所ではちょっとした有名人だった。
中学高校では残念ながら一緒になる機会がなかったので、
なかなかお目見えすることはなかったから私達の結婚式が久々のご対面だった。
しかし、数年ぶりに会ったお義姉さんは、誰だかわからない程に変わってしまっていて驚いた。
以前の華奢な印象は見る影もなく、豪快で垢抜けた女性がそこにいた。
あまりの変貌っぷりに目が点になった私に、強烈な抱擁で祝福してくれたのは嬉しかったが、
そんな様子を旦那は黙って見守っていた。
いつも感情を探るのが難しい彼の瞳に映っていたのは、微かな哀れみの色だった。
後にその理由を旦那から聞いて私は納得する。
お義姉さんは旦那のお義父さんが逝った後、それまでの研究だけではなく、
お義父さんが作り上げた団体を全て引き継いだ。
男女の壁がだいぶ薄くなった昨今ではあるが、
弱小な新エネルギー開発団体の長が女性というのは、
並大抵ではない苦労と迫害が付きまとうらしい。
お義姉さんは日々募る心労と多忙に追われたが、
逆にそれら全てを隠すように大人しい性格は豪快でポジティブな性格へと変貌していった。
きれいなストレートの長髪に染色とパーマをかけ、
控え目なでシックな服は全て棄て派手でけばけばしい服を好んで身に付けるようになった。
旦那はあまりにも変わってしまった姉の様子を見て、心を痛めた。

「よく大人しい性格の人がお酒を飲むと人が変わったように陽気になるときがある。
 あの人は精神を病んでしまって常にそういう状態に陥っている。」

彼は自分の姉をそう分析した。
旦那はそんな姉を救いたくて、これ以上見ていられなくて、
団体の代表を自分に引き継ぐよう何度も説得を試みたらしい。
しかしお義姉さんは頑として譲らなかった。
その理由は地位や名誉が惜しいからでは決してなく、
愛する弟には何のしがらみもなく研究に没頭して貰いたいため。
面倒事は全て私が引き受ける、だからあなたはお父様の意志を引き継いで…
それが父を亡くしてからの姉貴の口癖になってしまった、
と彼は抑揚の無い声をさらに沈ませ呟いた。
そんな事実が、旦那とお義姉さんの間に暗い影を落としている。


「こっちは全然駄目。それで、この支部での研究の方は順調なの?」

既に二杯目になるワインを注ぎながら、世間話のように進捗状況を確認する研究団体の代表に、
旦那は目も合わせずに答える。

「遅々として進まず。」

そういうと手元にあるマグカップに口をつける。
中身は牛乳。旦那は醗酵食品全般を好まない。どうも体が受け付けないらしい。
なので旦那の食事を作りながら時折指摘をされるが
「これも醗酵食品だったの?」と、気付かされる事が多い。
てゆうか、細かく分類すれば世の中のほとんどの加工食品なんて全部、醗酵食品だけどね。
その中でも醗酵度合いが高いものは本当に駄目みたいだ。
だからお義姉さんの買ってくるワインもアウト。女二人で美味しく頂く事になる。
紅茶も実はお茶っ葉を醗酵させたものなので苦手らしく、旦那は大人しく牛乳で晩酌だ。

「遅々として進まず、ねぇ 東京支部かカルフォルニア支部のような
 大きい研究所に移転した方が効率がいいんじゃないの?」

「ここの施設でも実験をするに事欠かない。故に移転をする必要性が感じられない。」

相変わらずお堅い物言いだけど、牛乳を飲んだ直後のためか、
鼻の下に白い跡が着いていて様にならない。あぁ、せっかくの色男が台無しだ。
そんな弟を苦笑混じりに見つめ、ワインを大きく一飲みし、溜め息を吐き出す。

「わかっているわ。それにここはお父様が残した大切な研究所。
 離れたくはないわよね。それにもう一つの理由は…」

そう言いながら私に流し目を送る。思わず体が小さくビクッと反応した。

「婿にいかれちゃ仕方ないか。養子に入った家の近くに居を構えないと意味ないもんね。」

言った後にお義姉さんは視線をワイングラスに落とす。
口元は笑っているが、瞳は私が苦手な寂しい目だった。そんな表情をされると、こっちが心苦しい。
…第一、もともとこの家と私の実家は近所じゃないか。婿とかあんまり関係ないし。

「素子は最近どう?学校楽しい。」

話の矛先を急に向けられた娘は自分専用のマグカップから口を離し、
真っ直ぐお義姉さんを見据えた。
この春から中学校に上がる娘は、旦那と同じように鼻の下に白く牛乳の跡をつけている。
可愛いなぁ、ちくしょう。

「学校は娯楽施設ではないため愉快か不愉快かの判断要素は不適切かと思いますが。」

旦那と全く同じ顔で表情で、同じ喋り方をする娘。歳を重ねる毎にますます旦那に似てきた。

「まぁ、確かに娯楽施設じゃないわね。でも友達と遊んだり好きな男の子が出来たりしないの?」

「ありません。」

あまりにも即答だったので、お義姉さんは可笑しくて吹き出してしまった。
顔を伏せてテーブルをバンバン叩く。
だけど親としては複雑よ。この子、本当に友達いなさそうだもん。
私はこれまでに一度も娘の口からクラスメートの名前を聞いた事がないし、
一緒に誰かと遊んでいる姿を見た時がない。
お義姉さんはだいぶ笑いのツボが治まってきたのか、ヒーヒー言いながら顔を上げた。

「ハハハ。あぁ、あんまり笑ったら失礼よね。
 それにしても素子、いつの間にそんな堅い喋り口調になったの?」

「それは私が教えたんです。誰と喋りる時でも敬語を使いなさい、って。」

ちょっと前の事だ。
この子の担任教師と三者面談をした時
(最近は中学校から私立に通う生徒が多いため、六年生になると一度進路相談が行われる)。
授業中に関係ない本を読んでいると指摘した担任に
「問題ないだろう。あなたが不利益な事をしているつもりはない。」と、
直接的に答えた娘を見て、私は驚いた。
普段家では旦那の真似をしてか、こういった喋り方をしているけど、
まさか担任の先生にまでこんな口のきき方をしているとは思わなかった。
頭が良くて手がかからない優秀な娘と思って、
親としてほとんど何も躾を施さなかった自分に反省した。
なので早速その日から、「誰かと話す時は絶対に敬語を使うこと」を約束させ、
国語辞典をプレゼントすると次の日からはきちんと敬語で話すようになった。
どうやらクラスメートにも敬語で話しかけているらしいが、まぁ問題ないだろう。
あんな傲慢ちきな喋り方で接されるよりはよっぽどマシだ。

そんな話をお義姉さんとしていると、時計は既に夜の10時を回っていた。

「さて!可愛い姪っ子の顔も見れた事だし、私は帰りますか!?」

そう言うやいなや、身支度を整え始めるお義姉さん。

「またフランスにとんぼ返りですか?」

「いいや。一度ロシアの支部にも顔を出してから帰るわ。」

嵐のように来ては嵐のように去っていくのがいつものこの人だ。
アメリカではハリケーンに女性の名前が付けられるが、お義姉さんを見てると納得してしまう。
研究進捗の報告と最近の実験データをメールで本部に送るように口早に言い残すと、
来たときと同じように壊れそうなくらいの勢いでドアを閉め、お義姉さんは帰って行った。

筋金入りの無口な二人と一緒に取り残されたリビングは、耳鳴りがするほど静まり返っていた。
あの人が来るとそのくらいうるさいのね、と思い、私は食器を片付け始めた。
台所で洗い物をしようとエプロンの紐を結んでいたその時、珍しく娘が旦那へ話し掛けた。

「お父様。何故あの事を伯母様にご報告なされないのですか?」

さっきまで静まり返っていたリビングに再び沈黙が訪れる。
旦那は目を閉じて貝のように押し黙っていた。
そう、私達は現在着手していた研究を、着実に進展させつつあった。
しかし、それを本部にもお義姉さんにも言えない理由があった。



実験室に並ぶ大型冷蔵庫の二つ目。上段にあるシャーレを取り出す。
中には乳白色の物体が入っている。ヨーグルトだ。
いや、正確に言えば「ヨーグルトになる前の段階の何か」だ。
それを顕微鏡で観察し、異常が見受けられなければ再び冷蔵庫に戻す。
そしてまた次のシャーレを取り出す。
およそ20ほどあるシャーレを観察したが、全て異常は発見出来なかった。
つまり、正常に醗酵作用は抑制されているという事になる。
もっとも古い実験体で、約三ヶ月は醗酵手前の段階で
その作用を作為的な方法で抑制されている事になる。

「『ヨーグルト』は全部大丈夫だったわよ。」

いびつな形の実験器具と睨めっこしている旦那に報告をすると、
彼は振り向かずに小さく「うむ」と呟いた。
私は気にかけずに遠心分離器と向き合う娘に声をかける。

「素子、そっちの調子はどう?」

娘は父親同様に実験器具と向き合ったまま小さく呟いた。

「醗酵抑制物質の抽出は出来ました。只今不純物の除去に取り掛かっています。」

私はそんな娘の様子を眺め、聞こえないように溜め息をついた。
相変わらず作業が正確で手早いですこと。


私達が現在取り組んでいる研究は、醗酵を抑制する不思議な物質を解明し無限増殖する事。
もしもこの醗酵抑制物質を無限に増殖する事が可能ならば、
突発性過醗酵エネルギー『ヨーグルト』の実現に大きな一歩を踏み出せる。
ただしあくまでも本当に最初の一歩だけ。
しかも限りある物質や資源を無限に増殖するなんて、今現在では不可能に近い研究だった。
それでも可能性は決してゼロじゃない。
そんな研究を旦那は『ケフィア』と呼んでいた。
何でも旦那のように『ヨーグルト』を研究する科学者達にとっては希望の象徴らしい。
理由は…何だっけ?忘れた。
まぁ、そんな研究の要となった醗酵抑制物質の出所は意外なことに旦那の体内から発見された。
そして発見するきっかけを作ったのは娘だった。

醗酵食品を好まない旦那を見て、
素子は「もしやお父様の体内には何か特別な物質が宿っているのでは」と、
漫画か小説の設定のような事を言い出したのである。
初めは旦那も私もまともに取り合わなかった。そんな事があるわけない、と。
それでも娘はしつこく調査をせがむので、試しに旦那の体液を色々と調べてみた。
ビンゴだった。旦那の体液を原子レベルまで分解してみた結果、
通常の人間にはあまり含まれない分子構造を持つ物質が発見された。
それを醗酵途中の食品に添加してみると、なんと醗酵作用が止まったのである。
醗酵作用を破壊したわけでも違う物に変えたわけでもなく、そのままの状態で「静止」させたのだ。
有り得ない事だった。しかし、その有り得ない事が目の前にある。
その晩、私と旦那は今後の研究について話し合った。
私は直ぐにでも研究団体の本部、つまりお義姉さんに連絡を付けて
団体総意で研究を進めるべきだと提案した。
もしもこの研究が成功し、新しいエネルギー源がこの世に出回れば、
エネルギー不足問題が深刻な現代でどれだけ役立つ事か。
研究にそんなに詳しくない私でも容易に考えが巡る。
私は興奮して旦那に話したが、彼は浮かない表情だった。
てっきり彼も同じ意見だと思ったのだが、彼は私の顔をしばらく見つめ、こう言った。

「本部にも連絡しない。姉貴にも伝えない。」

何故?世紀の大発見なのに?訳が分からず呆然と口を開ける私に旦那は理由を口にした。
それは彼が言ったとは思えない、意外な言葉だった。

「俺は親父が作った研究団体を無き者にしなければならない。」

「ちょ…ちょっと!それどういう事!?」


ますます訳が分からなくなった。
小さい頃から勉強ばっかりだった旦那が、研究のことしか頭にない旦那が、
研究を捨てたいだなんて。
何が言いたいのかさっぱり分からない。

「研究辞めたいの!?じゃあ今までやってた事は一体何だったのよ!?
 何のためにここにいるか分からないじゃない!あなたから研究を取っ」

「落ち着け!」

私は口から出掛けた言葉を慌てて飲み込んだ。心臓が早鐘を打っている。
あの無口でクールな旦那が、大声を出した。
彼は激した自分を諫めるように俯き「姉のためだ」と呟いた。

「お前も薄々感じてはいると思うが姉貴は好きで親父の跡を継いだわけではない。
 単なる子としての義務感だ。それが原因で姉貴は自分で自分の首を絞め続けている。」

私はいつもよりか細い声で話す旦那を黙って見つめた。
普段は血の通ってないロボットのような旦那が、いやに人間臭く見えてならなかった。

「親父が逝った後にそれまで繋がりを持っていた学会や企業、助力をしてくれた
 開発室や大学院が徐々に手を引きはじめている。
 ほとんど親父のネームバリューで繋がりを保っていた連中ばかりだったしな。
 何も目新しい研究結果を出さなれば当然だ。
 たぶんこのままではいずれ『ヨーグルト』研究団体は霧散する。
 しかしそれで良い。」

下を向き俯いていた顔をゆっくりと上げ、旦那は真っ直ぐに私を見た。
彼の瞳にはいつもの力強い光と共に、決意の色が浮かんでいた。

「俺は元の姉貴に戻って欲しいのだ。」

お義姉さんが彼の事を思っているように、彼もお義姉さんの事をちゃんと思っているのだ。
理屈っぽくて研究にしか興味が無さそうな姉弟だったが、
心の底にお互いへの思いやりを隠している。
姉弟って、そういうものなのか。一人っ子の私には想像でしか理解する事の出来ない。
ちょっぴり悔しくて、ちょっぴり嫉妬をした。
…そういえば素子も一人っ子だな。こりゃ今からでも、もう一人作るべきかな?

彼の気持ちは充分に分かった。でも、

「今回の大発見はスルーしちゃうわけ?」

それはあまりにも勿体なさ過ぎる。
そんなに科学に詳しくない私でも、今回の醗酵抑制物質の発見が
如何に貴重なものかくらいは理解している。

「もちろん研究は続ける。ただし極秘にだ。
 そしてもしも『ヨーグルト』が完成したら匿名で日本エネルギー開発促進学会にでも送りつける。
 あそこならば上手くやってくれるハズだ。」

無表情で私に淡々と説明をする旦那は、いつもの研究馬鹿の姿だった。
もしも新エネルギー源が開発に成功すれば、旦那は一躍有名になることは間違い無しで、
我が家の財形もかなり潤うことだろう。
特に最近は融資企業からの研究費もケチくさくなってきたし、非常に勿体ない話だ。
でも、旦那にその意志がなければ仕方がない。
私が言って考えを変えるような人には見えないし、
何よりお義姉さんを思う気持ちを一番に優先させるべきだ。
私だって、昔のようにおしとやかで清楚なお義姉さんの方が好きだ。

「分かったわ。あなたの納得するやり方でやってちょうだい。私も協力するからね。」

私の瞳を数秒見つめた後、旦那は全然感情が籠もっていないような声で「すまない」とだけ言った。
それでも、旦那が自分の気持ちを口に出すのは非常に珍しい事だったので、私は嬉しかった。
この歳になっても、そういう姿を見ちゃうとついドキドキしちゃうんだな、これが。



それ以来我が家では、娘も交えて日夜研究に従事している。
それでも研究はなかなか思ったように進まない。
醗酵抑制物質の無限増殖ももちろんだが、抑制された物質を分解、
もしくは解放するような作用を持つ物質がまだ見つかっていない。
問題はまだまだ山積みだ。
それでも私は、家族三人で仲良く(うち二人は無表情なため楽しそうには見えないが)研究や
実験をするのが好きだった。


「お父様。醗酵抑制物質が無くなりました。早急にこのビーカーに体液を提供して下さい。」

「残念ながら現在尿意は感じられない。しばらく待ってくれ。」

「何も尿だけが体液ではありません。血液でも構いませんが?」

「それは死活問題に関わるのではないか。」

「一リットル程度なら生死に関わらないはずですが。
 とにかくこのままでは研究が留まるばかりです。早急に願います。」

しばらくはビーカーを持ったまま睨み合いを続ける娘と旦那。
どうやら娘の方が一枚上手なようだ。いや、これはこれであまり喜べないか。
将来マッドサイエンティストになりそうで、ママは不安です。
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06:25  |  「ヨーグルト…。…いいえ、ケフィアです!」  |  CM(9)  |  EDIT   このページの上へ

Comment

姉貴急にフランス語www。

明るいようで、とっても深刻な内容・・・・。
とても、胸に思いがつまります・・・
(楓´∀`) | 2008年06月15日(日) 11:31 | URL | コメント編集

>>(楓´∀`)さん
そうですね。伯母さんが出るとどうしても空気が重くなります。
要人(かなめびと) | 2008年06月15日(日) 20:00 | URL | コメント編集

伯母様いきなり登場~ww
この人好きだったのにな~^^;
ママの視点だと親近感がわきますね♪

そして、とてもうれしいコメありがとうございます!!
爆睡しちゃって拙宅の更新遅れそうなので、
申し訳ありませんが、この場で失礼します^^;
もも、もちろんOKでありますww…というか、
むしろ平伏してお願いしたい心境です~><
なので、お好きなようにお書きくださいませ^^
momokazura | 2008年06月16日(月) 17:51 | URL | コメント編集

>>momokazuraさん
承諾ありがとうございます☆
苺ちゃんは次の章で登場してもらいます。
是非、楽しみにしていて下さい♪
要人(かなめびと) | 2008年06月16日(月) 18:03 | URL | コメント編集

こちらこそ、どうもありがとうございますww
ほんとにいいのかな…?って思いつつも、
いまからドキドキ、ワクワクしてます~♪♪

それにしても、お話がシリアスな方向に
進んできたようで、……不安です^^;

でもでもとっても楽しみですw応援ポチ♪
momokazura | 2008年06月17日(火) 20:31 | URL | コメント編集

ケフィアww面白い題材であると同時に、ユニークでした
ぜひ参考にさせてくださいね、自分も物書きの端くれなんで
よろしければ相互お願いします
天壌の蒼響 | 2008年06月17日(火) 21:14 | URL | コメント編集

>>momokazuraさん
ポチありがとうございます♪
話の流れ上、どうしてもシリアスに成らざるを得ないので。
でもね、私はシリアスな方向性で書いている方が得意なんですよ。
やっぱり自分自信、根が真面目に出来ているからなんでしょうね(嘘)


>>天壌の蒼響さん
こちらもまだまだ物書きの端っこにもかからないようなものなので・・・。
相互リンク、もちろん大歓迎です!
こちらこそ宜しくお願いします!
ただ・・・URLとか教えて頂ければありがたいかなぁ、と><
要人(かなめびと) | 2008年06月18日(水) 06:46 | URL | コメント編集

お越し頂いてありがとうございました。
初めにタイトルを読んでこれはギャグなのかと思った自分が恥ずかしいです(笑)
漸くここまで読み進めてとても読み易いものでした。
これからも応援していますね。

僭越ながらリンクを張らせて頂きました。
宜ししければ相互と言う形でリンクを結んで頂くと有り難い限りです。
それでは、失礼致します。
K | 2008年06月18日(水) 20:27 | URL | コメント編集

>>Kさん
お越し頂きましてありがとうございます。
実はこの話、始めはネタのつもりで書いてたんですけど、
いつの間にか一つの小説になってしまったんです。
だからあんなに題名がネタっぽいんですね><

相互リンクこちらこそ宜しくお願いします♪
早速貼らせて頂きますね☆
要人(かなめびと) | 2008年06月19日(木) 06:18 | URL | コメント編集

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