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2008'03.22 (Sat)

「ヨーグルト…。…いいえ、ケフィアです!」 エピローグ


【More・・・】

駅までの長い一本道を彼女と肩を並べて歩く。辺りはすっかり暗くなり、
帰宅する人影もまばらで、どことなく寂しい雰囲気が漂う。
でも、僕の心の中は温かい気持ちで満たされていた。
さっきここを通って彼女の家まで向かっていた時とは、全く別の感情で溢れている。
何はともあれ、取り返しのつかない出来事で打ちのめされた彼女は、
今はすっかり立ち直ったようで、いつものように無言だが姿勢良く道を歩く。
僕としても、明日からまたいつも通りの日々が始まると思うと、嬉しくて仕方がない。
高校に入学してからの僕の日常は、いつの間にか「放課後に彼女の研究所に行くこと」になっていたようだ。
でもそんな生活に不服など一片もありはしない。
今の僕にはそっちの方が充実している。
しかし、明日からと思いすっかり忘れていた期末テストのことを思い出した。
一気に意気消沈すると共に、焦燥感が胸をよぎる。
いくら彼女との研究が楽しいからと言って、こればっかりは疎かに出来ない。
そういえば、塾を休んでしまったことも思い出し、今日は徹夜だと覚悟した。

「あの、ちょっといいかな?」
申し訳ない気持ちを込め、彼女に声を掛けると、「はい?」と顔をこっちに向けず短い返事だけ返した。
「実は明後日から期末テストが始まるから、研究の再開はテストが終わった後でいいかな?」
恐る恐る伺いをたてると、しばしの沈黙のあとに、「了解しました」と、これまた短く返答がきた。
「では私も明後日からは学生らしく慇懃と登校することにします」
「はぁ。その方がいいよ。ところでテストは大丈夫なの?」
「問題ないと思われます」
即答だった。でも彼女が勉強をしているところは一度も見たことがない。
学校では机にかじりつき、ノートに研究に必要な構築式を書き殴っているし、家に帰っても実験に没頭する姿しか記憶にない。
まぁでも、彼女自身が大丈夫というならば、大丈夫なのだろう。
そんなことを考えていたら、不意になことを彼女が口を開いた。
「今日は来て頂きありがとうございました。もしもあなたが来なかったら私は最悪の選択をしていたかも知れません」
僕は、何て返事をしたらいいのか迷った。

彼女が僕に感謝するなんて何だかこそばゆいし、彼女がいう最悪の選択というのに、胸がつまった。
実際にそうなっていたかも知れないと思うと、ゾッとするし何とも言えない気持ちになる。
隣にいる彼女を見ていると、とても想像なんて出来ない。
「それにあなたがいたから研究を再開しようという気持ちになれましたし。あなたが…」
何故かそこで一旦言葉を区切り、彼女は遠くを見つめ何やら思案する顔になった。
僕はどうしたのかと訝しげていると、彼女は頭一つ大きい僕の方を見上げ感情が一切こもっていないような声で続けた。
「そういえば私はあなたの名前を知りません」
まさに呆気に取られるというのは、このことだ。
僕は半分苦笑い、半分驚きという器用な顔を作り、彼女に突っ込んだ。
「いや、だって入学した時は隣の席だったじゃん?しかもほぼ毎日顔を合わせていた仲だったのに?…うそでしょ…?」
「あなたという個体の識別には問題がなかったので」
彼女の力強い瞳は、今は僅かな探求心で輝いている。
その宝石のような眼差しに、僕は苦笑いで答えるしかなかった。
たぶん今日一番の、いや彼女と出会ってから今までで一番の驚愕だ。
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09:26  |  「ヨーグルト…。…いいえ、ケフィアです!」  |  CM(20)  |  EDIT   このページの上へ

Comment

●一気に読みました。

面白かったです。
とても引き込まれる展開でした。
読みたいけど時間ないので
また来ます。
古川哲也 | 2008年04月21日(月) 05:30 | URL | コメント編集

>>古川哲也さん
お越し頂きまして本当にありがとうございます。
次のも面白いと思うので是非読んでみて下さい♪
要人(かなめびと) | 2008年04月21日(月) 08:31 | URL | コメント編集

スミマセン、コメする場所がわからず、この場で失礼します。
コメントありがとうございました。
野原苺さん…素敵です^^
ぜひ使わせていただきます。ありがとうございました!
また後日、少しお時間を貰いますが、野原苺さんからのお礼ブロマイドを用意させていただきます笑
いらないとは思いますが…^^;
新作「萌え」と剣、ちょっと読ませていただいてたんですが、文章がとても上手で読みやすくて面白いです^^
時間が無くて続きをなかなか読めないのが残念です。
時間が出来たらまたゆっくり読ませていただきますね。
それではお邪魔しました。

momokazura | 2008年04月21日(月) 12:51 | URL | コメント編集

●管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
 | 2008年04月23日(水) 03:26 |  | コメント編集

>>momokazuraさん
野原苺ちゃんのブロマイド、ありがたく頂戴致します。
また可愛い子のイラスト、頑張ってくださいね♪
要人(かなめびと) | 2008年04月23日(水) 08:32 | URL | コメント編集

●管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
 | 2008年04月23日(水) 11:29 |  | コメント編集

いえいえ、こちらこそどうもありがとうございました!
アホ毛^^最初は風になびいてただけだったんですけどね…^^;
ではでは、私もリンクさせて頂きますねw
momokazura | 2008年04月25日(金) 23:16 | URL | コメント編集

>>momokazuraさん
今後ともよろしくお願いします♪
時間見てちょくちょく遊びに行かせて頂きますわ。
要人(かなめびと) | 2008年04月27日(日) 00:00 | URL | コメント編集

●やっとたどり着いたア

こんにちわ。
この小説を以前べつのサイトで見かけてここにたどり着きました。
この小説大好きです。
甘すぎず、辛すぎず、でも情感豊かに感じられます。
二人の純粋で正直なやりとりや、
素朴な情景に涙が止まりませんでした。
二人で食事をしているシーンは最高に素敵です。
この二人には幸せになってほしい。心からそう思えました。
ストーリーのみならず、キャラクターが素敵です。
ストーリー設定は突飛ですが無理のない表現で、
全く白けることなく話しに没頭できました。
男の子の方が変に茶化したりおどけたりしてないのがよかったです。
難しい科学の説明も、量的に多すぎず、
ああいうものが苦手な私にはよいアクセントになりました。

今、まだ男の子からの小説しか読んでないのですが、これからじっくり楽しませてもらいます。

これからも頑張ってください。
楽しみにしています。
また遊びにきます。
ランメイ | 2008年05月28日(水) 15:06 | URL | コメント編集

>>ランメイさん
貴重なご意見を頂きまして本当にありがとうございます!!
ランメイさんのコメントが次に小説を書く原動力になります。「萌え」と剣の方がそろそろ終わるので早速続きを書こうと思います。
要人(かなめびと) | 2008年05月30日(金) 08:34 | URL | コメント編集

こんばんは、初コメになりますw
遅くなりましたが、1作品一気に読ませて頂きました。
普段小説を読む時間が、中々ないので、
久々に読むのは大変かもなあと思ってたのですが、
話も登場人物も魅力的で、とても読みやすかったです。

小説を書かれる方の、情景描写の巧みさが羨ましいです。
うちはせいぜい対話形式なのでww

また時間が出来たら、続きを読ませて頂きます。ではw
雲男 | 2008年06月30日(月) 00:58 | URL | コメント編集

>>雪男さん
こんにちは!!ようこそお越し頂きました!!
いやいや、私は絵が全く書けないので
絵描きさんが正直うらやましいですよ。
こちらからもまた遊びに行きますね☆
要人(かなめびと) | 2008年06月30日(月) 19:31 | URL | コメント編集

一気に読んでみました!
前回二章まで読んで、明日読みますとか言っておきながら続きが遅くなってしまって申し訳ないです;;

いやぁなんだかとっても楽しませてもらいました。
次々とおもしろいことが起きて、読んでいくうちに引き込まれていきました。

それに文章がとっても頭でその状況を想像することが簡単にできて作品に入り込みやすかったです♪

「僕」語りの文章も
「僕と彼女」の会話の文章も
2つとも楽しめて一粒に二度おいしい小説でしたっ!

今度は次の作品も読んでみたいと思います^^
拍手・・・はモニター越しに届かないのでぽちっ!
さかたさん | 2008年07月02日(水) 22:07 | URL | コメント編集

>>さかたさん
遠路はるばるイギリスからようこそお出でませ♪
是非、次の作品も読んでみて下さい。
私的には2作目の方が好きなんですよ☆
要人(かなめびと) | 2008年07月03日(木) 10:28 | URL | コメント編集

●うほっ・・・

ふとお気に入りに入ってたwikiからたどって来てみたらケフィアシリーズ増えてるのね?(゚Д゚ )
まだ読んでないけど足跡をば
絵やらかした人 | 2008年07月17日(木) 12:54 | URL | コメント編集

もしや以前、絵を描いて頂いた方ですか!?
その説は大変お世話になりました!
どうぞ読んで行って下さいな!
要人(かなめびと) | 2008年07月18日(金) 05:53 | URL | コメント編集

エピローグ、大ウケしてしまいました(爆)
彼女は彼の名前を覚えてなかったのですね(笑)
呆気にとられている彼の姿が目に浮かぶようです。

読み終えてみて、彼の純粋な気持ちが伝わってきました。
何となく…自分を見つめなおすきっかけ作りにもなったような気がします。

夢 | 2008年08月02日(土) 16:09 | URL | コメント編集

>>夢さん
最後まで読んで頂きまして本当にありがとうございます♪
是非次回の作品も読んでみて下さい。
私個人的に第二部が一番好きなんです♪
要人(かなめびと) | 2008年08月03日(日) 06:29 | URL | コメント編集

なんだか、今までにない終わり方で良かったです^^
ところで、いったい、彼女は最後、何を言いかけたのでしょうか?少し気がかりですw

でも・・・ずっと一緒に居た彼の名前を知らないなんて。

ランクリしました★
なんか、いつも、あと一歩で3位入れそうなのにな・・・って思ってます。
桜輔 | 2008年08月27日(水) 20:16 | URL | コメント編集

>>桜輔さん
最後、彼女が言いかけたのは彼の名前を思い出そうとしたのです。
ずっと「あなた」ばっかり言っていたんで「そういえばこいつ名前なんだっけ?」みたいな。
いわば彼女が始めて彼個人に興味を持った瞬間とも言えますな♪

ランクリいつもありがとうございます♪
今日は3位になってましたよ!時々上がるみたいです♪
要人(かなめびと) | 2008年08月28日(木) 05:45 | URL | コメント編集

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