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2010'01.03 (Sun)

なんしきっ! 生意気なブルジョワと初めての試合形式

 宗方誠司の祖父は市議会議員だ。
 幼い頃から祖父に溺愛された誠司は、何をするにしても両親を差し置いて、市議会議員である祖父の後ろについていった。おかげで彼の周りにいる大人達も祖父の手前、誠司を可愛がり、子供相手に下手に出たりへつらうものも少なくなかった。誠司にとってはそれが当たり前の環境だったし、それが普通だと思っていた。
 そして、自身祖父を尊敬し憧れていた誠司は、事ある毎に祖父の話をするのが癖になっていた。周りにいた大人達はそれを笑顔で聞き入ってくれていたが、同年代の子供にはそうしてくれない。
 それもそのはず、誠司が語る祖父の自慢話は単なる厭味でしかなかった「僕のお爺ちゃんは市議会議員でね」「先週、僕のお爺ちゃんの別荘に行って来てね」「僕のお爺ちゃんに言えばね、なんでもしてくれるんだよ」
 そんなことばかり言う彼の周りからは、自然と友人達が姿を消していった。加えて、甘やかされるだけ甘やかされたのが一目で分かる彼の体型は、ぶくぶくと醜く太っていて、気付けば幼稚園でも小学校でも彼に友達は一人も居なかった。

 そんな彼も小学校を卒業して、この春、佐高第七中学校に入学した。
 彼は悩んでいた。中学に入学すると、必ずどこかの部活動に所属しなければならない。自身の体型を考慮すれば、吹奏楽部や文化部など身体を動かさない部活が適しているように感じるが、そこは彼の中の人並み以上のプライドが許さなかった。きっと文化部などに入部すれば、太った自分には運動部は向いていない、このデブ、わかっているじゃないか、とクラスメートに馬鹿にされるに決まっている。
 それだけは自らの突き出たお腹同様に肥大した自尊心と見栄が全力で拒否していた。

 かといって、彼が出来そうでこれぞという部活動は思い当たらない。
 第七中は運動部の活動が盛んで、下手に野球部やサッカー部に入ろうものなら、運動が不得意な自分は惨めに三年間ベンチを暖めるだけの部員になるのは火を見るよりも明らかである。いや、ベンチにすら座れるかどうかも微妙だ。そんな惨めな扱いは彼のプライドが許さない。
 では、だからと言ってどこの運動部がいいかといわれても全く答えが出ない。なので彼は中学生活の第一日目の放課後を、体育館やグラウンドなどに足を運び、他の生徒に混じって部活動見学を行っていた。


 彼は人ごみを掻き分け体育館を抜けると、次にグラウンドに向かう。
 屋内スポーツは日に焼けないので少しは楽かと思ったら、間違いだった。どの運動部も練習がハードで、部員の数が圧倒的に多い。これでは自分がその多くの部員の一人として埋没される運命なのは決まったようなものだ。そんな一山いくらのような存在になるのは彼には耐えられない。市議会議員である祖父に申し訳が立たない気がした。仕方なく彼は、続いて屋外の運動部を見学することにした。

 周りを見渡すと、自分と同じように新入生がそこかしこで部活動見学を行っている。誠司はそれを苦々しい気持ちで見つめていた。
 皆、誰もが同じ小学校の友人達だろう2,3人のグループで固まり、あれこれと談笑を交わしながら見学をしている。たった一人で行動をしているのは、どう見ても彼だけだった。
 佐高第七中は近隣地域、三つの小学校卒業生が通うが、誠司がいた小学校の生徒が大半である。なので、彼の悪評を知っている生徒が大多数なせいで、彼は始業初日からすでに孤立してしまっていた。
 だが、彼はだからといって他のクラスメートに身を低くして近付こうとか媚びて仲間に入れてもらおうなどとは、絶対にしたくはなかった。
 常々祖父が言っていた。大物は望まずとも自ずと輪の中心になってしまうものだ、と。彼は自分が輪の中に入るのではなく、クラスメート達が自分の器と人望に惹かれて、自然と輪の中心にしてくれることを渇望していた。
 彼は思っていた。周りの奴らはあまりにレベルが低すぎるせいで、自分の偉大さに気付かないのだ。だから彼は周りが自分のレベルに追いついてきてくれるのを、今は一人孤独に待っているのだと。そんな儚い妄想を背負い込んで、彼は友人達と群れるクラスメートを横目で一瞥しながら、校庭を散策した。

 とりあえずこの学校で一番成績が優秀という野球部を冷やかしにでも行こうかと、野球場に向かった誠司は、その隣にフェンスで囲まれたテニスコートを目にして驚愕した。
 テニス部はこの学校にないと聞かされていたはずなのに、ちゃんと活動をしているではないか! 誠司の足は、吸い寄せられるようにテニスコートに向かって進んでいた。
 運動が苦手な彼だったが、唯一まともに出来るスポーツがテニスだった。
 祖父の別荘がある軽井沢にリゾートで出かける度に、近くのテニスコートで元全日本選手と名乗るコーチに教えてもらいながら避暑地での余暇を楽しんだ。不幸にも小学校では当然のようにテニス部はなく、自分の腕前を披露する機会はなかったが、中学ではどうかと期待して担任教師に部の存在を問い質してみたが、その教師はテニス部がないと答えてガックリと肩を落としたばかりである。
 だが、こうしてテニスコートで数名だがラケットを振り、活動をしているではないか。誠司は自分に嘘の情報を流した担任教師を呪った。今度、祖父にお願いして何かしらの制裁を加えてやらなければなるまい。

 そんなことを思いながらフラフラとコートに近付いていく度に、誠司はある違和感に気付いた。自分が知っているテニスボールを打つ音と、彼らが響かせるボールの音が違って聞こえる。そしてさらに近付いてその違いに気付き、誠司は愕然としてしまった。
 なんということか! 彼らがやっているのは、ソフトテニスではないか!

 軽井沢のテニスコートで時々地元のソフトテニスサークルがしているのを、誠司はいつも苦々しい気分で眺めていたのを思い出す。あんな軽いゴムボールをポコポコ打ち合って何が面白いのだろう? あんなものは硬式ボールに挑めない非力で弱虫な人種が好む贋作スポーツだろうと、ソフトテニスを蔑んでいた。
 彼は本日二度目の失望感に苛まれ、思わず世界を恨んだ。何故こうも世の中はままならない。何故世界は自分にあわせてくれないのだろうか?

 だが、彼はフェンスに張り付き、テニスコートの上でラケットを振り回す生徒達をつぶさに観察した。背格好から察するにどうやら彼らはまだ自分と同じ一年生らしい。しかもどう見ても部員は三人に、顧問は女性教師一人。周りで見学をしているのは自分一人しかいない。硬式テニスしか経験がない誠司だが、軟式とてラケットでボールを打つのだから要領は一緒だろう。ソフトテニスを見下していたが、他に出来そうな運動部も思い当たらない。
 ゴムボールに甘んじるべきか否か、誠司は心の中で葛藤を繰り返していた。

「なぁ、正樹。あれ」
 ラリーを一旦中断した小堺は、ネット脇に神谷を呼び出して声を潜めた。不審げな顔を浮かべる小堺の視線を追うと、神谷も怪訝は表情になる。
「あぁ。俺も気付いていたけど……」
「なんだ、あの豚?」
 二人の視線の先には、フェンスに顔面と肥えた腹の肉をめり込ませた男子生徒が一人、こちらを凝視していた。その鬼気迫る目つきにいぶかしんだ二人は、どうにも居心地が悪くてラリーを再開することが出来なかった。そんな二人の元に、安西と休憩を済ませた丸藤も近付き、四人は額を突き合わせる。
「先生、あの豚、誰?」
「さぁ、たぶん新入生だと思うけど……」
 安西に見覚えがないところを見ると、どうやら一組の生徒ではないらしい。すると丸藤が自信なさげに口を開いた。
「たぶん、僕と同じクラスだった気がする。一人身体が大きい男子がいたはず。あんな顔だったような……」
「いや、何組のやつだっていいんだけどさ。なんであいつ、俺らを睨んでいるの?」

 それまで腕を組んで思案していた神谷が、「もしかして」と前置きをして言った。
「入部希望者なんじゃないか?」
 神谷の発言にお互いの顔を見合わせた三人は、腕を組んで唸った。
「でも、だとすると好都合よ。あと一人入部すれば、テニス部は準部じゃなくて正式な部として認められるわ」
 神谷と小堺は同時に丸藤を見つめた。急に二人から見られて、丸藤は恥ずかしそうに俯く。
「丸男、お前入部してくれるのか?」
「おぉ! さすがは丸男だ! 助かるぜ!!」
 照れながら眼鏡を直す丸藤は、二人に視線を合わせないように少し強い口調で答えた。
「だから僕は丸男じゃない! ……僕が入らないと困るんなら、仕方ないかなって思っただけさ」
 安堵の表情を浮かべる二人をよそに、安西は続きを促す。
「だから、もしも彼に入部の意思があるなら声を掛けるべきだと思うわけよ。ソフトテニスってペアがいないと大会に出れないんでしょ? だったら丸男君のペアが必要になるじゃない」
 丸藤です、と呟きながら、彼はフェンスにへばり着いている太った男子生徒をチラッと見ると、険しい表情になった。
 確かにペアがいないことには試合にも出れないし、入部した意味が無い。実力からして、神谷と小堺ペアは鉄板だから、必然的にあれが自分のパートナーになるというのか。どう見てもまともに動けそうにもないし、生意気で融通が利かなそうなあの顔がどうにも好きになれない。

 他のメンバーも同様の悩みを抱いていたようだが、このまま黙っていても仕方が無い。
「ねぇ、先生。ちょっと話しかけてきてくれない?」
 小堺の提案に、安西は露骨に嫌な顔をした。
「えぇ! あたし? ……どうしようかしら」
「どうしようかしら、じゃなくて。先生、顧問なんだから頼むよ」
 他の二人も安西に目を向け、頷いた。
 しばらく黙り込んだ安西だが、観念したように「わかったわ」と言うと、紐で縛られたロースハムのような格好になっている男子生徒に近付いた。
「こ、こんにちは。見学かしら?」
 少し強張った声色で話しかけたのだが、男子生徒は安西をジッと見つめたまま何も反応しない。もしかして声が遠かったのかと思い、もう一度声を掛けようとした時、その生徒が先に口を挟んだ。
「あの三人は一年生かい?」
 鼻に掛けた物言いが気になったが、安西はとにかく笑顔で「そ、そうよ」と返した。
「君も一年生だよね。私は一年一組担任の安西美和よ。何組の生徒さん?」
 会話の糸口を掴もうと当たり障りの無い質問をしたが、その生徒は眉間に皺を寄せ、呆れた様な口調で答えた。
「君、僕のことを知らないのかい? はぁ、てんで話にならないな、この学校の教師は。一体校長や学年主任は何をやってるんだい。
 あのね、僕は親切だから教えて上げるけど、君の首なんて僕のお爺ちゃんに一声掛ければすぐに飛んじゃうんだよ?」
 開いた口がふさがらないとは、まさにこのことだ。中学一年生とは思えない台詞と態度に、安西は怒りを通り越して笑いがこみ上げてきた。
 だが、思わず吹き出してしまいそうになったその一瞬先に、安西は先週に開かれた職員会議で聞かされた連絡事項を思い出した。
「あなたもしかして、市議会議員のお孫さんの宗方誠司君?」
 名前を呼ばれた生徒はフンと鼻を鳴らすと、わざとらしく溜め息をついて「30点」と呟いた。
「そこまで僕に言われてやっと思い出すなんて、この学校の教師もあまり期待が出来ないな。まぁ、今回のことは大目に見てあげるよ。良かったね」
 この生意気な生徒の素性が知れて、安西は納得して宗方をマジマジと見つめた。なるほど、教頭が苦虫を噛み潰したような顔で話していた特長と同じだ。小さい頃から大人に甘やかされるだけ甘やかされたブクブクのだらしない身体と、隠そうともしないふてぶてしい態度。あまり他の生徒に接するような尊厳な態度は取らないようにと注意を促された理由が今はっきりわかった。
 教頭にあそこまで言われたら普通の教師ならば割れ物を扱うように丁寧な応対をしなければいけないだろうが、この女性教師、安西は普通とはちょっと違う。
「ふぅーん、それで宗方君、テニスに興味があるの?」
 そっけない対応に宗方は虚を突かれて一瞬目を見開いた。今まで出会ってきた大人のように、自分へ諂うだろうと想像していた宗方だったが、この女性教師はまるで一般人のように自分を扱ったのだ。
 呆気に取られた宗方はつい素直に反応してしまった。

「う、うん。僕、テニスしてたから……」
 その言葉を聞いた安西は、パァッと瞳を輝かせてフェンス越しに宗方の手を取った。呆けていた宗方は次に顔を真っ赤にしてしまった。
「君もテニス経験者なのね! どうかしら? テニス部に入ってみない?」
 急な入部要請に宗方は口をパクパクさせて固まった。
 これまでの人生で誰かに何かを誘われたことなど一度もなかった。大体は周りの大人が自分がしたいことを先回りして準備していてくれてたり、自分が命令をしてそれに周りが従うだけだった。他人に自分の行く末を提示されるなんて、初めての経験だった。
「せっかくだからあの子達と一緒にテニスをやって見せてよ、ね? いいでしょ?」
 そう言うと安西はフェンスの入り口に回って、宗方の手を取るとテニスコートの中に導いた。
 小さくて華奢だけど、柔らかくて温かい手……。こんな若い女性から手を握られたことも初めてだったので、宗方は味わったこともないほどのトキメキを味わった。

「ねぇ、みんな聞いて。この子もテニス経験者なんだって!」
 安西に手を引かれて顔を朱色に染めた宗方を、三人はマジマジと見つめる。特に丸藤は、宗方の顔と安西に握られた手を交互に眺め、少し恨めしそうに言った。
「僕、この子を大会で見たこと無いよ。君、どこのクラブに入っていた? この町には僕がいたジュニアクラブしかないはずだよ」
 すると宗方は安西の手を振り払って、ムッとした表情をすると胸を張った。
「と、当然さ! 僕がそんなジュニアクラブなんかに入るわけないだろ! 僕は元全日本選手のコーチから教えてもらってたんだから!」
 丸く突き出たお腹をさらに突き出し威張る宗方に、小堺は素直に好意的な笑顔を向ける。
「へぇ、すごいな! そんなすごい人から教えてもらったんならお前、相当上手いだろ?」
 意味も無く褒められたことに気を良くした宗方は、今度は鼻を高くして自慢話を始めた。
「もちろんだよ。なんせ僕はそのコーチからお爺ちゃんの別荘がある軽井沢で、マンツーマンで指導してもらったんだからね」
「軽井沢……別荘……。お前、すっごい金持ちなんだな!」
「ふふぅん! 当然さ! 僕のお爺ちゃんは偉いんだからな! しかもそのコーチはウィンブルドンに出場したこともあるんだぞ!」
 その一言に、その場の全員は一斉に固まった。そして次にお互い顔を突き合わせ、最後にたるんだ顎を持つ宗方をジッと見つめる。
「お前……テニスって、硬式?」
「当然だろ! 君達のようなゴムボール遊びと一緒にしないでくれ!
 ……まぁ、そこの教師がやれって言うからわざわざ来てやったんだけど。暇つぶしくらいになら相手をしてやってもいいよ」
 小堺が盛大に溜め息をついたと同時に、神谷と丸藤も小さく溜め息をついた。
 少々癪に障るがまたもや経験者が入部してくれるのかと期待をしてしまったが、どうやらぬか喜びだった。やはり世の中そうそう上手くはいかないと、人生の厳しさを12歳の三人は噛み締めた。
 その感情を一人味わえない安西は、首を傾げて神谷に尋ねた。
「やっぱり、硬式経験者だと駄目だったかしら?」
「いや、そんなこともないですけど。ただ、打ち方とか根本的に違いますからね」
「そんなに違うの? あまり変わらないように見えたけど」
 素人な質問に、神谷に替わって丸藤が答えた。
「硬式テニスはどちらかと言うと両手でラケットを振るんですけど、ソフトテニスは必ず片手打ちなんですよ」
「だからソフトテニスをやってると、右腕ばっかり太くなるんだよな」
 袖をまくって両腕にグッと力を込める小堺。確かに良く見ると、右腕の方ががっしりとしていて力こぶが心持ち大きい。
 もう一度盛大に溜め息をついた三人に、宗方は腹を立てた。
「なんだよ。ソフトだって硬式と大して変わらないだろ! この僕がソフトでもやれるってところを証明してやるよ!」
 そう言うと宗方は、小堺の持っていたラケットを奪い取るとブンブン素振りをした。その振り方は明らかに運動神経が良さそうに見えず、尚且つ硬式よりの打ち方で、違和感が否めなかった。
 だからその時、三人はもっと大きな違和感があることを見逃していた。

「じゃあせっかくだしさ、四人いるんだったら試合形式をして見せてよ。ソフトテニスの試合は四人いれば大丈夫なんでしょ?
 それに、硬式とそんなにルールが変わらないらしいから、宗方君だってすぐに出来るわよね?」
「あ、それ面白いかも。良いんじゃない?君たちに僕の実力を思い知らせてあげるよ」
 安西の提案に気前良く答える宗方。丸藤はたぶん自分のペアになるであろう宗方に、硬式と軟式のルールの差異を計るべく、サービスの順序やポジションの確認を二、三質問した。相変わらず上から目線で受け答えをする宗方を腹立だしく思いながらも、丸藤はソフトテニスと硬式テニスのルールや、ダブルスでのポジションに大きな違いが無いことを確認する。

「うん、大丈夫そう」
「あ、ちなみに僕は前衛だからね。誰か他の人が後衛をやってくれよ」
 神谷と小堺が無言の合図を丸藤に送っている。どうやら当初の思惑通りに彼が宗方のお守りをしなければならないようだ。
「あ、じゃあ僕が宗方君の後衛をやるよ」
「君かい? ふーん、まぁ、せいぜい僕の足を引っ張らないように頑張ってくれたまえ。なんせ僕はいつも元全日本選手のコーチと組んでいたからね」
 きっと足を引っ張っていたのは、この醜く肥えたブルジョワだったんだろうな、と心の中で悪態をつきながらも、丸藤は弱弱しく笑顔を見せた。
 もしも本気で宗方が入部するとなれば、必然的にこの少々鼻につく口調の男子生徒が自分のペアになる。そう思うと、彼は無駄な衝突や諍いは避けたほうが無難だと、半ば諦めながら考えを巡らせた。
 ソフトテニスは何よりチームプレーを重んじる。ペア間の意志の疎通がなってなかったり、仲違いが原因で勝敗に大きく左右してしまうことを、彼は痛いほど良く知っている。

「よし。それじゃあ、始めようか! 最初だから俺らがサーブでいいぜ!
 セブンゲームマッチ、プレーボール!!」
 いつの間にかもう一本のラケットをバックから持ってきた小堺が、高らかと試合開始を宣言する。四人は顔を見合わせると、一度だけ小さく頷き「お願いします!」と互いに礼を交わした。
 そして後衛陣は素早くベースラインまで下がり、前衛陣はサービスエリア内のネット前に位置して静かに待機した。顧問の安西も慌ててコートから出ると、フェンスの傍で固唾を呑んで四人の生徒達を見守る。

 左手でボールを軽く地面にバウンドさせて感触を確かめた神谷は、細く息を吐くとサーブの構えを取り「はいっ!」と短く掛け声を発する。それに呼応するように他の三人も続けて「はいっ!」と気合をかけた。
 あの生意気な宗方もテニスの心得があるからか、自然に反応する。

 試合が始まった。


 神谷のファーストサーブは吸い込まれるようにサービスエリアに入り、それを丸藤が緩やかなロブで返す。そして後衛陣はコースを変えることなく、クロス展開でしばらくラリーを続けた。先ほどの乱打と同じ光景である。
 神谷の放つシュートボールを、丸藤が安定したロブで打ち返す。
 もしも本当の試合だったら、神谷は丸藤のような打ち込むよりボールを繋ぐ事を得意とする後衛相手には、コース変更を多用して相手を拡散させ、前衛の隙を突くか小堺のボレーに期待してポイントを稼いでいく。
 そういった戦術を用いるはずだが、今それをしないのはある画策があってだ。
 丸藤のペアである宗方、彼の実力を測りたいからである。

 硬式テニスの経験が多少あるようだが、その腕前はいかがなものか。ましてやソフトテニスという土俵に立ってどの程度やれるか、わざとチャンスボールを相手に送り続けているのである。
 これだけ相手後衛から頻繁に打ち続けられては、前衛としてはいつでもボレーをして下さい、と言われているようなものだ。
 しかし、宗方はジッとボールを目で追うだけで、ボレーをする素振りは全く見せない。丸藤も小堺も、神谷の画策に直ぐに気付き、反撃しようとせず黙って付き合っている。特に小堺としては、こうもロブばかり上げられては、自分の仕事が全く無い。ただ欠伸をして頭上を通過していくボールを眺めていくだけである。

 5,6本打ち合いが続いても動こうとしない宗方に、神谷は痺れを切らせてしまった。1ゲーム目の一本目でここまでラリーを続けては、後半ばててしまう。
 スタミナ不足が悩みの神谷は、仕方なくこのラリーを終わらせようと、宗方のサイドを抜いて手っ取り早くポイントを先取しようとした。

 そして先ほど小堺を沈めたように、宗方の左サイドの隙間に向けてシュートボールを打った瞬間、それまで信楽焼きの置物のように沈黙していた宗方が素早く反応し、抜けると思ったボールをボレーで打ち返した。

 一同、一瞬の出来事に呆気に取られて目を丸くしたが、その時になってあることに気付いた神谷は、つい大きな声を上げてしまった。

「こいつ……左利きだ!」

 神谷の言葉に初めて気付かされた小堺と丸藤も驚きを露わにして、勝ち誇ったような笑みを浮かべて満足げにラケットを肩に掛けている宗方に注目した。そのラケットは、間違いなく左手に握られている。
「そうだよ。僕は左利きなんだ。そんなに珍しいことかい?」
 宗方が今のラリーでポーチ(打ち合っている最中に飛び出してボレーを取ること)に出なかったのは、わざと神谷がサイドを打つことを狙っていたからである。
 正クロス展開で前衛がポーチに出やすいのは、必ずフォアハンドのボレーになるからである。ボレーにもフォアハンドとバックハンドがあるが、圧倒的にバックハンドのボレーの方が難しい。それは左利きにも同じことが言えるのだが、サウスポーの選手は正クロス展開でポーチに出ようとするとバックハンドになるために、どうしても後手になってしまう。
 だが、サイドを抜かれるボールをボレーするときには、左利きはフォアハンドになるのだ。

 神谷はすっかり自分が嵌められてしまったことに気付き、思わず舌打ちをした。宗方のサイドを抜く一瞬、妙に彼の左サイドが空いていて打ち込みやすいと感じた。
 だが、それは宗方の誘いだった。
 彼は神谷をシュートボール打ちタイプの後衛と一瞬で見極め、わざと神谷がサイドを抜きやすいように、自分が得意とするフォアハンド側を空けていたのである。
 ただ単に硬式テニスを齧っただけの初心者と甘く見ていたが、どうやら宗方は恐ろしいほどに頭の回転が速いサウスポー前衛だったのだ。

 そのことに気付いた他の二人の目の色も変わった。小堺はニンマリと微笑むと、神谷の方を向いて
「正樹! 本気でいくぞ!」
 と声を張り上げた。運動神経が鈍そうなボンボンだと油断していたが、思わぬ好敵手が現れたことに、前衛としての本能が刺激された。丸藤も同じように、自分のペアが予想外の選手だったことに、一気にやる気に火がつく。
「宗方君! ナイスボール!」
 自分が認められたことにすっかり舞い上がった宗方は、ラケットをブンブン振り回すと高笑いをした。
「ハハハ! やっと僕の偉大さに気付いたようだね、凡人達!
 さぁ、さっさとサーブを打ちたまえ!
 この市議会議員、宗方繁蔵の孫である僕と君達の力量の差を見せ付けてあげるよ! このままラブゲームで行っちゃうかもね!」
 すっかり調子付いた宗方を一瞥すると、神谷はカウントを言ってサーブを放つ。少し力み過ぎたせいか、サーブはフォルト(サービスが入らなかったこと)してしまった。
 そしてセカンドサーブを打ち、神谷は両足にグッと力を込めて宗方のレシーブに注目した。小堺も丸藤も目を見開いて宗方のレシーブに見入った。そして皆に注目されながら、宗方は高笑いを上げて力いっぱいラケットを振りぬく。

 そう、力一杯にラケットを振り抜いてしまった。
 あまり聞いたことの無い乾いた音を立てて、ボールは空高く舞い上がり、風に流されてそのままフェンスを越えて、野球場の外野まで飛んでいった。そのボールの行く先を目で追った一同は、ガックリと肩を落とす。
 レシーブを打った時の宗方のフォームは、とてもじゃないがテニスを経験していた人とは思えないものだった。ボレーや戦略には一目置く宗方だったが、ストロークの方はどうやらてんで素人らしい。

落胆する一同に言い訳するように、宗方は顔を真っ赤にして弁明する。
「だって! 前衛なんてボレーだけを決めていればいいんだろ! ストロークなんて後衛に任せておけばいいのさ! なんせ僕のペアは元全日本の……」
「わかったから、豚、ボール取ってこい」
 宗方の話を遮り、小堺がラケットで野球場の方に飛んでいったボールを示す。こういう場合は場外ホームランを放った本人が取りに行くのが暗黙のルールである。
まだブーブー文句を言いながらテニスコートを出て行く宗方に、ペアの丸藤が後を追った。こういう何気ない優しさがチームプレーを育てるのである。
 安西はそんな二人の後ろ姿を眺めながら、今日覚えたての言葉を使って、ぼそりと呟いた。
「それにしても、なかなか盛大なロブだったわね。」

 それから、ボールを取って戻ってきた四人はゲームを再開した。
 ソフト初心者である宗方の巧みな戦略に翻弄されながらも結局、神谷&小堺ペアは4-1で圧勝した。初戦を敗北で飾った宗方はすっかり不機嫌になってしまったが、ストロークが全くなっていない素人が入ったペアでは、1ゲーム取れただけでも上等である。
 今の試合を観戦していた安西は、惜しみない拍手を送って、四人を労った。
「みんなすごい上手だったわ! 先生本当にびっくりしちゃった。これからの部活、楽しみね」
そして、肩で息をして汗をダラダラ垂れ流している宗方へ声を掛ける。
「宗方君、もしよければテニス部に入部してみない?
 君が入ってくれればちょうど四人。テニス部が正式な部として認められるの」
 実は彼の心はすでに決まっていたが、如何せん素直じゃない性格の宗方は、わざと勿体ぶった。
「うーん、どうしようかな。僕、何かと忙しいし、まだ他の部活も見学してないし」
「そこを何とかお願い。丸男君もペアがいなくて困っているのよ。君が入部してくれれば、きっと心強いわ!」
「だから先生、丸藤……」
 そこまでよいしょされては、宗方としても断る理由がない。彼は鼻をヒクヒクさせながら、
「わかったよ。先生がそこまで言うんなら仕方ない。この僕がテニス部に入部してやろうじゃないか。ありがたく思いなよ、君達」
 と承諾した。その言い方に一瞬ムッとしながらも、三人はガッツポーズをして喜びを分かち合った。
 安西もその様子が嬉しくて仕方ないようで、子供のように何度も手を叩いている。
「始業式当日に新たに部を設立して、まさか初日で部員を集めて正式な部になるなんて……運がいいとかそういうレベルじゃないわ! この部、引きが良いわよ! 私も出来るだけお手伝いするから、みんな頑張ろうね!!」
 そう言って顎に手を掛けて一同を見回した。キラキラと輝く瞳を浮かべる少年達の顔をじっくりと眺めていく。
「とりあえず、部長を決めなきゃね。……誰がいいかしら?」

 思案していると、真っ先に小堺が手を挙げて発言する。
「はい先生! やっぱり正樹がいいんじゃないかな?」
 すると神谷は顔を歪めて後ずさりする。
「いや、いい。俺は辞めとく」
 大人しくてあまり性格を表に出そうとしない彼は、どうやらこういう代表という立場は苦手なようだ。すぐに手っ取り早く面倒ごとを押し付けやすそうな人材を見つけた。
「丸男。お前、部長をやってみないか? 俺が推薦する」
すると丸藤は手を大げさにブンブン振り、眼鏡を掛け直す。
「丸藤だ! 嫌だよ! 僕なんか絶対に無理だって! こういうことは小堺君、得意なんじゃないかな?」
 苦笑いを浮かべて身体を揺すりながら、小堺は首を横に振る。
「無理無理。俺に部長なんて務まるわけないだろ」
「そうね。小堺君には向かないわ。ここは一つ、発起人の神谷君、どうかしら?」
「先生、ホッキ貝がどうしたって?」
「小堺君、ちょっと黙ってて」
「いや、俺は……。ここはやっぱり丸男が……」
「だから丸男じゃないし、絶対やだ!」

 どうやら全員、部長という役職は荷が重た過ぎるらしく、とにかくたらい回しである。そんな光景を傍から眺めていた宗方は盛大な溜め息をついた。
 小堺は元気が良いだけで、頭が悪いからまず部長に向いてない。丸藤も気が小さくて人をまとめる役は出来そうもないし、神谷もテニスは上手いが本人が頑なに拒否をしているところを見ると、どうも器ではないようだ。
 宗方は手で目元を覆うと空を仰ぐ。そして、尊敬する祖父の言葉を思い出していた。
 大物は望まずとも器に合った役を任されてしまう、と。彼は唐突にその言葉を理解したと同時に、今がまさにその時だと自分の運命を受け入れた。

 と、そんなことを勝手に考えていた彼は、咳払いをすると皆を注目させた。だが、周りの人間は自分には反応を示さず、熱心に押し付け合いをしている。仕方なく宗方はもう一度、さっきよりは大きく咳払いをしたが、誰も自分には気付かない。
「もう! 何なんだね、君たちは!」
 急に発奮し出した宗方に、一同やっと注目した。顔を真っ赤にした肥えた少年に、小堺が面倒そうに声を掛ける。
「お前が何なんだよ、豚。何か用か?」
 皆の視線が自分に集まっていることを確認すると、宗方は腰に手を当て大きく胸を張った。
「ふんっ! 仕方がないから僕が部長になってやるよ!」
 一瞬沈黙が流れたが、次の瞬間には皆、一斉に露骨に嫌な顔をした。だが宗方はそんな彼らの表情など全く気に留めることなく、自身に満ち溢れた態度で鼻をヒクヒクさせる。
「単なる凡人でしかない君達には荷が重過ぎるだろ? その点、市議会議員の祖父を持つ僕はこういうことに馴れてるから適任だよ。
 まぁ、どちらかといえば役不足感が否めないけど、この際文句は言わないさ。甘んじてこの役職を務め上げるとしようじゃないか」

更新日 1月8日

 少年達は腕を組んで考え込んだ。
 確かに面倒ごとを任されるだけの部長なんて、誰だってやりたいわけではない。そこへきて単なる目立ちたがり屋の宗方が立候補をしている。まさに願ってもないことだ。
 だが、このふてぶてしい態度が鼻につく少年に任せて、本当に良いのだろうか? 部長ということを鼻にかけて、とんでもないことをやらかしそうな気配も、無くはない。それになんだか威張りくさっているそのしたり顔も頭に来る。
 けれど、だからといって自分が部長になるのは勘弁だ。そんな葛藤が頭の中をグルグル駆け巡っていた。
 顧問の安西も珍しく真剣な表情で悩み、宗方が部長になった際に生じる様々なデメリットを頭の中でシミュレートしていた。どうにもこの少年を部長にするには、不安過ぎる。

 皆の沈痛な態度に業を煮やした宗方は、大きな声を上げて催促した。
「僕が部長で問題ないだろ! なんだい、何とか言ったらどうだ!」
 その言葉に皆一様に首を傾げる。確かに問題はないが、かと言って賛同し辛い。
 そしていい加減イライラしてきた固太りな少年を冷静に見据え、三人の少年と女性教師は目配せをすると、小さく頷いた。その頷きにはこんな思いが込められていた。
『とにかくここは彼に譲ろう。ただし、あまり調子つかせないように』

「わかったわ。じゃあ、部長は宗方君にお願いするわね」
 顧問からの許可が下り、パァッと顔を輝かせた宗方は、次に部員達へ同意を求める。
「……頼んだ」
「宗方君、よろしくね」
「しっかりやれよ、豚」
 満場一致で自分の就任を認めてくれたことに、宗方はこれまで味わったことのない歓喜が胸に溢れかえった。
 それは自分もいずれあらゆる役職をこなし、いずれは祖父のような立派な市議会議員になるという、自分の夢を果たすために踏み出せた一歩だったからだ。本当に小さな一歩だったが、確実な歩みだった。

 と、またもや勝手な感慨に耽っていた宗方は、抑えきれない感激を吐き出すように、声を張り上げ高らかに宣言した。
「よしっ! では今日から僕がこのソフトテニス部の部長だ! 皆の者、しっかりとついて来るんだぞ!
 まずは手始めに、お爺ちゃんにお願いをしてこのテニス部の部費を上げてもらおう!」
「あら、それは無理よ」
 第一回目の所信表明を出鼻から挫かれ、宗方は顧問の安西を睨み付けた。
「先生、僕が誰だか知っているんだよね?」
「確か市議会議員のお孫さん、宗方誠司君よね」
 あまりに呆気なく答えた女性教師に、自尊心を貶された宗方は腹を立てた。
「そこまで知っているなら何で無理なんだ? 僕のお爺ちゃんに頼めばなんだってやってくれるんだぞ!」
「いくら宗方議員でも、市立中学校の部費にまで関与するのは難しいわ」
 ニッコリ微笑みながらあっさりと答えた安西に、宗方は激しい怒りを覚えた。手がワナワナと震えている。
 自分のことはいくら貶されても構わない。だが、尊敬する祖父を侮辱されるのだけは、彼にとって決して許されないことだった。
「一介の教師でしかない君にお爺ちゃんの何が分かるんだ!
 もう本当に頭に来たよ! お爺ちゃんに頼んで君の首を飛ばしてあげるよ!
 謝ったってもう遅いからね! せいぜい泣きながら次の就職先を探すんだな!」
 そう言って宗方は自分の通学鞄を乱暴に掴むと、肩をいからせてテニスコートから出ていった。
 乱暴にフェンスを閉める乾いた音がコートに響き、次には静寂に包まれる。

 安西と宗方のやり取りを見守っていた少年達は、悲痛な面持ちで安西を見上げた。
「ねぇ、先生。大丈夫なの?」
「宗方君のお爺ちゃんが市議会議員って、本当なんですよね?」
 心配そうに自分を見つめる小堺と丸藤。神谷は無言だったが、眉がへの字になってしまっている。
 こんな可愛い生徒達に心配されるなんて運動部の顧問も悪くないな、と安西は内心ホコホコしながら、三人の頭を順番に撫でる。
「うん。たぶん大丈夫よ」
 なんの根拠があるのか分からないが、はっきりとそう答えた安西に、一同不思議そうに顔を見合わせる。
 そんな風に最後は部長不在という形で、ソフトテニス部第一日目の練習はお開きになった。


 丁度その時、テニスコートでの出来事を二階の職員室から見守っていた人物が一人、一学年主任の田中である。
「おやおや、これは初日から受難ですな」
 思わず一人ごちたが、いつの間にそこへいたのか、隣で同じように眺めていた二学年主任の長谷川が、興味深げに聞いた。
「アレって、例の宗方議員のお孫さんですよね。何が受難なんですか?」
 話し相手が出来た田中は、つるっと顔を撫でると嬉しそうにテニス部の顛末を長谷川に説明した。
 職員室からテニスコートはだいぶ距離があるので声は聞こえてこなかったが、田中は自分なりの想像を織り交ぜて、今見た光景を話した。
「ははぁ、なるほど。それで安西先生が宗方君を怒らせてしまったというわけですか。しかし、それのどこが受難なんです? 少なくとも安西先生にとっては全く問題ではないでしょうに」
 いぶかしみ尋ねる長谷川に、田中はニンマリと意地悪な笑みを浮かべて答えた。
「いやいや、受難なのは宗方君の方でしょう」
 それを聞いた長谷川はしばらく考え込むと、田中と同じ笑みを浮かべた。
「なるほど……。あの見るからに甘ったれな彼のことだから、絶対に今晩あたりお爺ちゃんに泣きつくでしょうね」
「はい。その時に初めて知るんでしょうな」
「えぇ。彼が安西先生に決して逆らえないことに」
 顔を見合わせて声なく吹き出す両学年主任。田中が笑いを堪えながら呟く。

「なんせ、安西先生のお父様は県議会議員ですからな。しかも副議長だから、市議会議員でしかない宗方さんなんぞ、重鎮の安西県議に頭が上がるわけがない」
「まったくです。それに宗方市議は学校教育にあまり興味がないようですし。
 どのみちこれで、宗方坊ちゃんがこの学校で大きな顔が出来なくなるわけですから、我々としては願ってもないことですからね。
 なんなら、宗方君の担任も安西先生に任せるべきでしたね」
「ハハハッ。それもそうでしたな。これは失策でした」
 教師の中でも学年主任クラス以上しか知らされていない秘密だということを思い出し、二人は声をしのばせる。そして、新入生に面倒な生徒が一人いるという厄介事が一つ解決したことに、肩の荷を下ろしたようにホッと溜め息をついて、ほくそ笑んだ。
 その夜、宗方家で安西教諭の解雇を祖父にお願いした誠司が、たっぷり一時間ほど説教されたことは、言うまでもない。




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 | 2010年01月05日(火) 20:01 |  | コメント編集

●No title

デブ・・・
ブルジョワ・・・
・・・デブルジョワ?(すんません)

遅くなりましたが明けましておめでとう御座います!
今年もお仕事やら小説やら、ご健康に気をつけて頑張って下さい!

そして丸男くん聞く度に「ズバリ」なアイツ思い出す自分です
楚良 紗英 | 2010年01月06日(水) 17:35 | URL | コメント編集

●No title

>>楚良 紗英さん
今年もよろしくお願いしますね。
デブルジョワ、これはなかなか良いネーミングです。
今後はこれでいきましょう。
私は丸男というと、とらドラ!の方を思い出します。
要人(かなめびと) | 2010年01月07日(木) 06:59 | URL | コメント編集

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