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2011'11.01 (Tue)

「毒・ゴーレム・錬金術師」

お題「毒・ゴーレム・錬金術師」

ゴーレムを錬成しようと思ったんだ。
たった一人でこの広い城で暮らすには寂しかったから。
さいわいに書庫にはゴーレムに関する本がたくさんあったし、材料も単純で城の中にある資材でなんとかなったから。
種族は僕と同じ、ロックゴーレムでいい。他愛のない話が出来る相手ならば、誰でもよかったんだ。
それなのに……。
「う、うぅ……。なんだここは?薄暗いぞ。明かりはどこだ」
ゴーレムを錬成したはずなのに、魔法陣の上に完成したそれは……。
「うわっ、寒!俺、真っ裸じゃないか!フルチンじゃないか!おい、そこのロックゴーレム。何か服を持って来い」
錬金術師だった。

その錬金術師は渡された服を受け取りながら、嬉々と口を動かした。
「人間が完全体の金を錬成するのに成功してから二百年。もはやこの世に錬成不可能なものなど存在しなくなった」
ワイシャツに袖を通しズボンを履く。手先は不器用なのか、カフスボタンと格闘していた。
「世界中のありとあらゆる化学技術や物理法則は、錬金術というカテゴリーで統一された。錬金術がそれまで出来なかったことを全て叶えた。人類の歴史は飛躍的に進歩したのである」
丈の長い革のジャケットを羽織り、整髪料で前髪を上げてメガネを掛ける。
「その錬金術に特化した知識と技術を兼ね備えた、人類の中でもより優秀で、より卓越した人間こそ、錬金術師!つまり、俺のことよ!俺に錬成不可能なものなどないのだ!貴様程度ならば魔法陣無しでも錬成出来るわ!」
逆だよ、バカ。お前が錬成されたんだよ。どや顔の錬金術師が実に滑稽である。
僕は岩の体を崩しながら、ぼんやり錬金術師の話を聞いていた。
材料も魔法陣も詠唱も間違っていないはずだった。ロックゴーレムの錬成なんて錬金術の初歩も初歩で、ゴーレムでしかない僕の知能でも容易だと本に書いてあったのに。
僕は立ち上がってマジマジと錬金術師を見つめる。
こいつ、もしかするとゴーレムかもしれない。
そもそも僕は、本物の人間を本でしか見たことがない。だから姿かたちから錬金術師だと勝手に決めつけていたが、中身はただのロックゴーレムじゃないのか?
「どうした、ロックゴーレム。散歩の時間か?」
試してみよう。
僕は腕を後ろに引いて、錬金術師を小突いた。
「ぐはぁ」
ちょんと小突いたはずの錬金術師は、真顔のまま軽々と吹っ飛んでいく。
洋服タンスに激突して跳ね返り、向かいの壁にぶつかる。勢いは止まらず壁を突き破り、隣の倉庫部屋の薪をなぎ倒しながらやっと止まった。
こりゃあマズいことをしてしまったと、恐る恐る倉庫部屋を覗き込む。錬金術師は薪の下敷きになっていたので助け起こすと、白眼を剥いて頭から血がピューピュー噴き出していた。
僕は慌てて錬金術師を医務室に抱えていった。

「この石が!主に手を挙げるゴーレムがあるか!分解錬成で庭に敷く玉砂利にしてやるぞ!」
頭に包帯を巻かれながら、錬金術師はプンスカ怒鳴った。その度にまた血が噴き出してくるので、僕は新しい包帯に替えた。
「すみません。本当に錬金術師さんなのか怪しかったから、試してみようと思って」
「ほう。貴様、石の分際で言葉が話せるのか。なかなかやるではないか」
頭を上げて僕を見る錬金術師。包帯が巻き辛いから顔を下げてもらう。
「まぁ、一応は。それよりもお願いですが、その石という呼び方をやめてもらえませんか」
「ふん、ロックゴーレム風情が主に対して口答えか」
主じゃないし。生み出した順番で言うなら、僕の方が主だぞ。
「貴様、名はあるのか」
「え。うぅん、ありません」
「ふむ。ならば主として俺が名を授けてやろう」
顎に手を当てて目を閉じながら、錬金術師は考える。そしてしばらくすると、ボソッと呟いた。
「石ッコロ」
「イヤです」
「岩ッコロ」
「語呂悪いです」
「『お前は躓いたことを道に転がっていた石のせいにするのか?』とか」
「長いし、それセリフです」
「えぇい!錬成物のくせに注文の多いやつだ!」
お前もな。
苛立った錬金術師は頭に巻かれた包帯を乱暴に取る。
「あ、まだ止血が」
ギロッと一睨みしてから錬金術師は救急箱の中身を漁って、薬を三つほど取り出す。そして薬棚に歩み寄るとまた二つほど薬を選ぶと、机の上に置いて手をかざした。
そして口中でモニョモニョ何かを唱えると机の上がパッと光り、薬達が一つの錠剤に変化していた。
「即効性の強い止血剤に錬成した。包帯なんぞよりもこっちの方が手っ取り早い」
水も無しにゴクリと錠剤を飲み込むと、錬金術師は僕に人差し指を突き付けた。
「コロ。貴様の名はコロである。今日からはそう名乗るがよい」
その名前が僕の胸にスッと落ちる。初めて魂を吹き込まれたような感触に、心が弾んだ。
「あの、あなたのことはなんと呼べば?」
「なんでも構わん。主とでも呼べばいい」
「いや、それはイヤです」
「貴様はさっきからイヤイヤばかりだな。こんなに反抗的なゴーレムなど聞いたことないぞ」
溜息を吐いてから錬金術師は、自分の胸を指差した。
「俺は偉大なる錬金術師、グラン・アルケミストだ。だからグランとでも呼べばいい」
「グラン……」
僕はそう呟いて錬金術師を見た。メガネの奥の瞳が不敵に微笑む。
「わかりました。今日からあなたをグランと呼びます」
「呼び捨てにするな。グラン様、もしくはグラン様と呼べ」
「イヤです。グランさん」
「どこまでも反抗的なゴーレムだな。錬成の材料にツンツン草でも入れたのか、貴様は」
こうして僕とグランさんの奇妙な生活が始まったのだ。


「おい、コロ。腹が減ったぞ」
書庫の整理をしていると、グランさんが不機嫌な顔をしてやってきた。
「腹が、減る?内臓器官のどこかが消滅したのですか?」
「そういう意味じゃない。空腹だ。何か飯を作れ」
僕は納得をして積んであった本を床に下ろした。
「栄養摂取のことですね。人間は食物を経口摂取してエネルギーに変換すると本で読みました。てっきり腹部の細胞が抉れて破損したものかと」
「なにそれこわい。なんでもいいから食わせろ。こんなにデカい城ならば食料庫くらいあるだろ」
「了解しました、グランさん」
「いいか。栄養バランスを考えろよ。味は二の次で構わん。ただしニンジンだけはダメだからな!絶対に入れるなよ!あとピーマンもダメ!セロリもダメ!」
僕は未だにダメなものを羅列するグランさんを置いて食料庫に向かった。
栄養バランスがいい食物。タンパク質と炭水化物を豊富に含み、ビタミンも適度に配合されたものね。
普段は錬成の材料に使われがちだけど、アレが一番いいな。

食料庫から持ってきたソレを皿に盛り、食堂のテーブルに腰掛けてたグランさんに給仕した。
だが目の前のソレを見て、グランさんの顔がみるみるうちに曇っていく。
「なあ、コロ。なんだこれは?」
「マンドレイクです」
真っ白い身に根のような手足。みずみずしい緑色の葉に、新鮮な証拠に「ケケケケ」と鳴き声まで上げている。体長が二十センチもあるので、これはマンドレイクの中でも主(ぬし)級の代物だ。
絶品料理なはずなのに、何故だかグランさんの顔は真っ赤になっていく。
「どうしました。食べないんですか?」
「こんなキモいものが喰えるか!」
テーブルをガンと両手で叩きグランさんは怒りを露わにする。僕はアワアワと頭を抱えた。皿の上のマンドレイクまでアワアワし出した。
「何でですか?きちんと栄養バランスの優れた食物ですよ。一度、成分解析の術に掛けてみて下さい」
「おや、脂質は少ないのにビタミンB1が豊富じゃないか。それにビタミンCの含有量もイチゴの五倍も……って、栄養の問題じゃねえ!」
マンドレイクに手をかざして成分解析をかけながらグランさんは怒鳴る。
「こんなのが料理か?いや、食材じゃん!百歩譲っても食材のままじゃん!」
「なるほど。確かに人間の消化器官では、生のマンドレイクはお腹を壊しますね」
僕はマンドレイクに加熱の錬成を加える。断末魔の叫びを上げて、マンドレイクはこんがりと焼けた。
「どうぞ。お召し上がり下さい」
「喰えるか、ボケ!」
グランさんは叫びながらテーブルをひっくり返した。
「ああ!せっかくのマンドレイクが勿体ない!」
「うるさい!この能無しが!もういい、自分で料理する。おいコロ、この城から一番近い街はどっちだ」
割れた皿を片付けながら僕は答える。
「たぶん、正門を出てから南に向かえばすぐだと思います」
「思います?曖昧な情報だな」
「僕、この城から出れない錬成になっているから。大広間にこの辺りの周辺地図があるので、確認してみてください」
ふむ、と独りごちながらグランさんは僕をしげしげと見つめた。
「制約のある錬成物、か。コロ、貴様はいつからここにいる?」
「え、いつからだろう……。記憶もないほどずっと前から」
「貴様を錬成した術師は?」
「……すみません。会ったことないんです」
嘘ではなかった。僕は気付けばここに独りでいたのだ。
自分が何か、何のためにいるのか、わからないまま。
グランさんはそんな僕を穴があくほど見つめてから、急に興味を失ったように踵を返した。
「まあ、貴様のことなど別にどうでもいい。街へ買い物に行ってくる」
「あ、はい。行ってらっしゃい」
そして食堂から出ていく間際、グランさんは振り返らずに訊ねた。
「我々、人間は食物からエネルギーを摂取し活動する。コロ、貴様は何をエネルギー源としているのだ?」
「えっと、体内に永久機関を宿しています。それも錬金術の恩恵らしいですが」
返事もせず、グランさんは食堂から出て行った。


それから二時間後。
静かに出掛けていったグランさんだったが、帰ってきた時は実に騒がしかった。
「何なんだ、あの街は!有り得ない!有り得ないぞー!」
ドアを蹴飛ばして帰宅を告げたグランさんに驚いて、僕は手に持っていた植木鉢を落としてしまった。
「ああ、マナハーブの苗が。せっかくここまで運んだのに」
「そんなことはどうでもいい!あの街は一体どういうことなのだ!」
グランさんの剣幕に押されて、僕は後ずさる。
「街が、どうかしたんですか?」
「人間が一人もいないのだ!いるのはみんな、ゴーレムばかりなのだ!」
僕を指差してグランさんは声を張り上げた。
呆気に取られながらも、僕はグランさんに状況を確認する。
「街がゴーレムだらけってことです?」
「あ あ!歩道を歩いているのもゴーレム!コンビニで立ち読みしているのもゴーレム!駅前で怪しげな勧誘をしているのもゴーレム!マツモトキヨシでコンタクトレ ンズの洗浄液をどっちにしようか迷っているのもゴーレム!メイド喫茶で萌え萌えジャンケンしているのもゴーレム!一体どういうことだ!」
お前がどういうことだ。何が目的でメイド喫茶に行ったんだよ。
「ゴーレムに買い物させて、術師は自宅にいるとかは?」
「ないな。一度勇気を出して民家に突撃してみたが、やっぱりゴーレムしかいなかった」
おまわりさん、不法侵入者がここにいます。
「しかも店に並んでいる商品もおかしい。売っている物は化学薬品や資材など、錬金術に関する物ばかり」
「それだけ錬金術が普及している証拠なのでは?」
グランさんは手を振って否定する。
「いいや、違う。全くそれしかないのだ。つまり、生身の人間が使用するような物が見当たらないのだ」
メガネに手をかけて考え込むグランさん。そして部屋の隅にあった鞄を肩に掛けると、来たばかりのドアを開けた。
「しばらく調べものをしてくる。数日は戻ってこない」
「え。だったら城の書庫でもいいのでは」
「駄目だ。ここの書庫では調べきれん。街に中央図書館があったから、そこにいく」
そう言い残して、グランさんは風のように城を出て行った。
僕は胸騒ぎが収まらなかった。とにかく早く、グランさんが戻ってきてくれることを願わずにはいられなかった。



グランさんが帰ってきたのは二日後だった。
服は薄汚れ、頬はこけている。足元も若干ふらついていたが、目に宿った強い意志が帰宅の労いを拒んでいるように感じた。
「コロ、この城の見取り図はあるか」
鞄からいくつかの本を取り出しながら、グランさんは訊ねた。
「あ、はい。確か執務室に」
「持ってこい」
グランさんに言われるまま、僕は執務室にドスドス足音を立てながら向かった。
そしてグランさんは見取り図を受け取ると、無言でサッと目を通す。傍らに広げた本と照合するように眺め、そのままどこかに向かって歩き出した。
僕も慌てて後を追う。
「あのグランさん、どこに行くんですか?それよりも何も食べてないをじゃないですか。顔色が悪いですよ」
「昨晩、あまりにも空腹で野生のマンドレイクを食った。結構美味かったが、やっぱりキモかった」
城の階段を上り、二階の奥へと進んでいく。この辺は客間ばかりで僕もあまり立ち入らない場所だ。
「錬金術が完全体の金を錬成したのが今から二百年前。その当時はまだ化学や物理が人間の文明の主体だった」
歩きながらグランさんは語る。僕はそれを黙って聞いた。
「そ れから錬金術が普及するにつれて、人間の生活基盤そのものが変貌していった。機械や手作業の非効率な製造工場は錬金術現場に変わり、農場や牧場までも錬金 術のおかげで必要がなくなった。畑など耕さなくても、少量の米とエーテルの結晶さえあれば、飢餓で苦しむ国を丸々一つ救えるほどの食料が錬成可能だから な」
一番奥の部屋に着くとグランさんは足を止めた。
「だがその頃から、地球全体が乱れ始めた。食物連鎖は狂い天変地異は立て続けに起き た。それでも人間は悔い改めることはしなかった。錬金術を発達させれば被害を受けた建物など一瞬で直せるし、気候はおろか人命すら容易に操れたのだから。 しかし、ついにエントロピーの法則は崩壊してしまった」
その部屋は堅固な錬金術で施錠されていて、誰も立ち入ることが叶わなかった。
グランさんは入り口に跪くと魔法陣を床に描く。そして煌びやかな宝石を撒くと、錬金術を発動させた。
扉が重厚な音を上げて開いた。
「濃い硫酸で満たされた海を泳ぐイワシの群れ。砒素をまき散らす植物達。プルトニウム混じりの糞尿を垂れ流す野生動物。この世界は人間が生身で生活するには不可能な大地になってしまった。そう、人間は錬金術の恩恵を代償に、毒にまみれた世界を手に入れたのだ」
部屋に足を踏み入れる。そこは整理が行き届いた執務室だった。
部屋の真ん中に大きめのテーブルがある。そこの主であろう人物の名札が隅に飾られていた。
「このままでは人類は滅亡してしまう。錬金術の第一人者であるクレイン・マリー・シュナイザーはある方法を人類に提示し、自らが最初の実験台となったと文献に書かれている。それは、タンパク質の肉体を捨てて屈強な岩の肉体であるゴーレムになること」
クレイン・マリー・シュナイザー。いまグランさんが口にしたのと同じ名前が名札に記されていた。
「コロ、貴様がそのシュナイザー博士ではないのか?」
頭部を抑えてうずくまる。心の奥底に鍵をかけて沈めていた記憶が、ゆっくりと開封していった。
「ああああああっ!」
叫ばずにはいられなかった。おびただしい量の記憶が頭の中を駆け巡る。
それでもなお、話を止めないグランさんの声だけが僕の耳に届いた。
「シュナイザー博士の自らをゴーレムに錬成する術式が成功するのを皮切りに、人類は次々に己の体をゴーレムに錬成していった。多少の記憶障害はあったようだが、人類はなんとかその種を保つことに成功したのだ。尤もそれが、本当に成功なのかは疑問だがな」
そう言うとグランさんは、糸が切れたマリオネットのように崩れ落ちた。
驚いて駆け寄る。グランさんの鼻からかなりの量の血が流れていた。
「グランさん!グランさん!」
「貴様のいう永久機関とは、原子力そのものだよ。ゴーレムが動き続ける限り、とんでもない放射線が空中に漂う。ますます生身の人間にはきつい地球になったものだ」
鼻血に続いてゴポッと口から吐血をすると、グランさんは体を痙攣させ始めた。
「俺を人間として錬成させたのも、貴様の記憶を呼び起こす起爆剤になるためのシュナイザー博士の計らいなのかもしれんな」
「グランさん!イヤだ!死んじやイヤだ!」
「またイヤイヤか。貴様はそればっかりな奴だ。まぁ、それはそれで楽しかったがな」
「もう喋らないで!いま、医務室に連れて行くから!医者も、いや錬金術師をここに連れてくるから!」
ビクンビクンとしていた痙攣が止まる。グランさんの顔が青白く染まっていった。
「イヤだー!グランさん、いなくなっちゃダメだ!僕を独りにしないで!」
瞳孔が開いていく。グランさんは吐息を漏らすように、最後の言葉を残して息を引き取った。
『コロ。またいつか会おう』


風が、南から流れてくる風が庭の木々を優しくさらっていった。
心地良い日差しに合わせて小鳥たちもさえずる。僕はクスリと微笑んで、台所から持ってきた餌を撒いた。
小鳥たちがついばむ姿を横目に、中庭の空き地に魔法陣を描く。
グランさんがこの世を去ってから長い月日が過ぎた。
僕はあの日からまた錬金術の勉強を始めた。いや正しくは、錬金術に頼らない世界を作るための勉強か。
毒に犯された土壌を浄化し、まともな遺伝子を持つ動植物を保護し、自然に数を増やしていった。
僕は空に手をかざし、成分分析の術を使う。大気中の放射線濃度は今日も正常だった。ここまで戻すのに一万年はかかったけど。
魔法陣の真ん中に必要な材料を配置する。そして何度も間違いがないか確認し、深呼吸をした。
金色の長い髪を指ですく。身にまとった花柄のワンピースの裾がよれてないか、細かく見た。
僕はつい先日、ゴーレムの肉体を捨てて元の人間に戻った。自らこの環境に適合するか人体実験の意味もあったが、この姿の方がグランさんの隣に合う気がしたから。
風でたなびいた前髪を指で直し、胸に手を当てる。そして短く術式を唱えた。
「グランさん。僕は、コロはあなたとの約束を果たします。また、あなたに会いたくて……」
魔法陣が光りかがやく。大気中の密度が一点に凝縮し、パンッという音と共に弾けた。
錬成が成功した。
「グランさん!」
僕は嬉しくて魔法陣に駆け寄る。もやがかって舞った埃の奥が晴れた。
「う、うぅん。なんだ、随分と明るいな。ここはどこだ?あれ、何故俺の体がガチガチなのだ?まあいい。そこの女、ちょっと肩を揉んでくれ」
僕はガックリとうなだれた。
今度はお前がゴーレムかよ。

おわり


お題提供・闘う手羽先、エバさん。Thanks!

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