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2010'06.25 (Fri)

私の星乞譚。 第二章

 始業式が終わり、体育館の上座にいた来賓達がまず退場していく。そしてこれから私達も各教室へ案内されるだろうと思った矢先、体育館のスピーカーからアナウンスが鳴る。
『これより、男子生徒は講堂に移動して下さい。女子はこのまま体育館に残って下さい』
 ざわめく館内。だが先生達はそんな反応を予想していたかのように、何ということもなく男子生徒を体育館から出て行くよう誘導を始めた。理由もなしに退去を命じられた男子生徒達は口々に不満を漏らしていたが、それは女子にしても同じだった。小学、中学と強制的に女子校と男子校に分け隔てられ、やっと高校になって共学になれたというのに、ここに来てまた区分されることに不信感は募っていくばかり。私も黒い人だかりに混じって去っていく鎌田君の後姿を、寂しく目で追っていった。
 男子生徒が全て退出したのを見届けると、一人の女性教師が体育館の扉を閉める。閉鎖された空間に女子生徒達は何が始まるのかと口々に囁き合っていた。私も隣に座ったともえちゃんに声を掛ける。
「ねぇ、ともえちゃん。一体、何が始まるのかな?」
 清楚な彼女の顔にも幾分、暗雲が立ち込めている。それでも、ともえちゃんは努めて、品良く凛然と構えていた。
「わからないわ。でもここは学校だし、変なことをされるわけじゃないと思うけど」
 
 ざわめきで埋め尽くされた中、ステージの演台に一人の女性が歩み寄る。背丈は私よりも少し高いくらいで、カールが掛かった銀色の髪に透明なほど白い肌。黒い外套に身を包んだ出で立ちは異様過ぎるが、それよりもっと不思議なのは彼女の容貌だった。一見すると小学生くらいの童顔にも見えるが、表情によっては四十歳を超えた熟女にも見える、年齢不詳な女性だ。その女性をステージの上で見るのは本日二回目、一度目は始業式のとき、最初に挨拶をしたので印象に残っている。
 そしてその女性は一度目と同じく演台に両手を乗せて、にんまりと微笑み口を開いた。
「先ほどもご挨拶申し上げましたが、改めましてごきげんよう。この創天高等学校の校長である朔張望と申します。またの名を『ミセス・ムーン』。月の化身です」
 校長の話に、その場にいた全員が信じられないものでも見るように目を見張った。
 闇夜を照らす月や、夜空を彷徨う惑星には化身がいて、この地球上のどこかで私達のような人間の身なりで存在している、と聞いたことがある。それは南極老人星と呼ばれるカノープスのような、実在はしているけど見ることのない、おとぎ話の主人公のようなものだと思っていた。
 だけど今、私達の目の前にいる女性は自ら『月の化身』と自身満々に名乗った。疑おうにもその独特な風体を目の当たりにして、否定できない自分がいる。その姿の背景に、見上げた夜空に煌々と輝く月と同じ感触を味わった。
 私だけでなく、他の女子生徒達も同じような気持ちで息を飲んでいる。普段は天空に鎮座する白光の主が、今は手を伸ばせは届く位置にいる。それだけが違和感として拭えなかった。
 そしてさらに月の化身である校長は言葉を続ける。

「ちなみに、この学校には『彷徨の民』の化身も四人います。夏日さん、夕子ちゃん、こちらへ」
 校長に促され、壇上に上ってきた二人の女性教師。一人はスラッと伸びた長身にショートカットの金髪。キリッとした顔立ちに刺すような赤い眼。
「こちらの格好良いお姉さんが当校のアラビア・ギリシャ語講師の西郷夏日さん。火星の化身よ」
 もう一人は小柄な体格に無理矢理丈を合わせたスーツを身にまとい、オレンジ色のフワフワとした髪の女性。まるで子供のような顔つきだ。
「こちらは当校の歴史講師、明天夕子ちゃん。金星の化身よ。この時期でいう宵の明星ね。お子ちゃまに見えるけど、かなりお婆ちゃんよ。年齢はこの太陽系と同い年だから」
 軽口を言う校長を明天先生がキッと睨む。
「そんなこと言うけど、ルナちゃんだって同い年でしょ。おババは私だけじゃないんだから!」
 皆の視線が集中しているというのに頬を膨らませる明天先生を、気にせずにケラケラと笑い飛ばす校長。
「そりゃそうだわね。でも微妙に生まれた年が違うわよ。私は四十五億年前だけど、夕子ちゃんの方が先なんじゃないの? 太陽に近いし」
「うっ。そんな細かい設定は必要ないでしょ! 原始惑星の頃から考えればみんな同い年なの! 同級生なの! 四月生まれか八月生まれかの違いじゃん!」
「まぁ、そんな話はどうでもいいのですけど。ちなみにもう二人、木星の大木歳蔵さんと土星の桐野耕一さんは男子の方に行っているので、また後日改めて皆さんにご挨拶述べさせましょうか」
「どうでも良くない!」
 壇上でキャンキャンと喚く明天先生とは対照的に、隣の西郷先生は終始無表情で佇んでいた。
 頭がおかしくなりそうだ。化身とはいえ、太陽系の惑星が四つに地球の衛星がこの学校に集結している。いつも冷静沈着なともえちゃんですら、人目も憚らず口をあんぐりと開けて呆けている。

 全生徒が自分の常識と目の前にいる天体の化身達の存在をすり合わせようと必死に頭を痛めている中、校長は思い出したかのようにマイクを握り直した。
「さて、話を戻しましょうか。何故、我々『忠義の淑女』や『彷徨の民』がこの創天高等学校に集結をしているか、その理由をお伝えしなければなりません。皆さんは『星結い』や『星乞い』という言葉はご存知かしら?」
 その瞬間、女子生徒達の目の色が一斉に変わった。空気の変化の理由が掴めず、秋空のフォーマルハウトのような孤独感を覚えて周りをキョロキョロと見渡す私に、ともえちゃんが片目を瞑ってウィンクを飛ばす。
 その合図で私はやっと合点が入った。始業式前にともえちゃんが言っていた『星を結ぶ』という言葉の意味の謎が明らかになるということか。
 生徒達の反応を満足げに眺めながら、校長は口元を三日月のように歪めて微笑んだ。

「ふむ。皆さんはなかなか世事に聡いのか、それともおませさんなのか、どっちかしら? どのみち説明が楽で助かるのは事実ね」
 自体が未だに把握できていない私は置き去りに、校長は話を続ける。
「皆さんは『恒光石』は持っているわね。ちょっと見せて下さる?」
 そういうとその場にいた女子達はおもむろに胸元に手を入れると、巾着袋のような小さな袋をそれぞれ取り出した。中にはハンドメイドの巾着を持った人もいるが、その袋の殆どは同じ柄で、ご丁寧に「天野総合病院」と刺繍まで入っている。もちろん地元で産まれ、地元で育った私の袋も、幼馴染のともえちゃんのも同じものだ。
「よしよし、ちゃんと持っているわね。親御さんの躾が良い証拠よ」
 校長はみんなが手にかざした袋を繁々と眺め、満足そうに頷く。
「きっと今まで、この石を肌身離さず持っているように、小さい頃から言われてきたことでしょう。この恒光石は皆さんが産まれたと同時に授かった、魔法の石……星の元となる石なのです」
 相変わらず校長の一言一言に、驚愕で眼を丸くしているのは私だけのようだった。他のみんなはさも当然のようにすまし顔で、少し頬を上気させている。
 私は巾着袋の紐を緩めると、落とさないように慎重に中から恒光石を取り出した。やや小振りで透明な六つの玉が、私の小さな手の平に転がる。暗がりでかざすとぼんやりと淡い光を放つ恒光石。これが星の元になるというのは、本当なのだろうか?
「人が生を授かった時に必ず手にしているという恒光石は、古来より様々な使われ方をされてきました。最もポピュラーなのは運勢占いでしたが、ある地方では災厄の根源と扱われて早々に処分されたり。また別の地方では幸運の賜物として奉納されたり。ともかく恒光石はその地方の歴史と文化の影響を受けて、独自の扱われ方をされてきました。
 そこで、我々が眼をつけたのが、この天野市だったのです。この地方では古くより、恒光石を『星結い』の手段として重宝されていたのです。初めて人を好きになった思いが重なるとき、恒光石を空に打ち上げ星座を結ぶ行為を、天野市に住む人々はごく自然に行ってきました」
 その言葉を聴いた瞬間、胸の奥がジュッと熱くなった。そして私の鼓動に共鳴するように、手に持った恒光石が鈍く光を放つ。私は自分の鼓動を抑えるように手をギュッと握り締めた。
 壇上の校長、そして火星と金星の化身である女性教師二人は凛然とした態度で佇んでいる。
「私達、『忠義の淑女』と『彷徨の民』がこの天野市に集結した理由はただ一つ。漆黒の闇である夜空に、星座を広げる手助けをするためです」
 心の中に、尾を引いた星がスッと流れていった。

 そう言うなり、校長はスッと右手をかざす。すると体育館内の照明は徐々に暗転し、ステージの上からは真っ白く巨大なスクリーンが下りてくる。そのスクリーンにプロジェクターが上映を始めた。
「この学校の年度予算を全て注ぎ込んで、理事会と県の教育委員から大目玉を喰らって手掛けた力作よ。ご覧あそばせ」
 マイクで椅子に腰掛けるよう促すと、校長と二人の惑星はステージから降壇した。その場にいた全員がおずおずと着席をすると、途端に体育館のスピーカーから荘厳な音楽が大音量で流れる。スクリーンにはコンピューターグラフィックを駆使したと思われるアニメーションで、大きく「創天高校プレゼンツ」という文字が現れた。まるで映画のオープニングのようで、一同はスクリーンに目を奪われていた。

 無駄に豪華なオープニングを終えると、画面はそのまま宇宙空間のアニメーションが流れている。壮大な銀河系を悠々と流れていく映像に、随分とお金が掛かっている製作だと改めて感心させられた。
 その映像をしばらく眺めながら、スピーカーからは心地良い男性の声で、宇宙の起源や雄大な歴史についてナレーションが流れている。私は呼吸をするのも忘れて、しばらくはスクリーンに見入っていた。
 現在、夜空に見える星座や星雲などの解説も終え、その侘しさすらも抱かせる星空に憂慮の念を嘆きながら男性の声がスーッと遠のいていく。そして画面は急にシンプルになり、赤い文字で「レッスン1。星結いとは?」と映し出された。
 どうやらここからが本題らしい。私は高鳴る胸を抑えつつ、今まで知らなかった世界に一歩足を踏み出す感触に、微かな痛みを覚えていた。
『ほしゆいというのはー、すきな人にじぶんの気持ちをつたえることを、言うの、ですっ』
 体育館中がずっこけた。
 スピーカーから突如として流れてきたのは、明らかに小学校低学年くらいの舌っ足らずな女の子の声。セリフの内容と声が明らかにミスマッチ過ぎる。しかもこの声、どこかで聞き覚えがあると思えば、先ほど壇上で挨拶をした明天先生ではないか。
 本人はというと、みんなの視線が気に入らないのか、ムッスリと不機嫌な表情をしている。隣に座る校長は期待通りの反応とばかりに、手を叩いて大笑いしていた。
 もしかしてこの映像は、先生達の自主制作なのだろうか。

 気を取り直して画面に眼を戻すと、さっきのオープニングとは対照的過ぎるほどチープなアニメーションが流れている。一発で手書きと分かる下手くそな絵で描かれた女の子が、ビー玉を手に持っている。
『ゆうこちゃんは、す……すきな男の子がいましたっ。彼のことをかんがえると、よるもねむれません。そのおもいは、ひにひに大きくなっていくばかり、ですっ』
 明天先生の声が震えている。こういうナレーションは得意でないのかもしれないし、なにより映像の女の子の名前が自分と一緒なので、照れているだろうか。
『それでも、ゆうこちゃんはけついしましたっ。だ、大好きな、お、男の子……としぞうくんに、告白しること、決めたのですっ! キャー! なんで私が木星に告白しなきゃいけないのよ! ミスキャスト! 役名を変え、もがもが……』
 途端に私情が挟んできたのか、映像の内容とセリフが全く合っていないコマが数秒ほど流れた。本人は暗がりでも分かるほど真っ赤な顔をして、頬の辺りがピクピクと痙攣している。校長に関しては足をバタバタと踏み鳴らして、声なき大爆笑に悶絶していた。
 というよりも、撮り直せば良かっただけではないのか?

更新日 6月30日

『ハァハァ……そして夜。ゆうこちゃんは、近所のこうえんにとしぞうくんを、呼び出しましたっ。そうです、ほしを結ぶためです。胸にひめたおもいを、と、としぞうくんに、打ち明けるためですっ! ……もぅ、本当に名前を変えてよぅ』
 そして暗がりに現れた、これまた素人が描いたであろう男の子。この子がとしぞうくん、なのだろう。目元が離れた落書きのような顔をした男の子が手を挙げる。
『どうしたんだい、ゆうこちゃん! こんな時間に僕のことを呼び出して。何か素敵な用事でもあったのかな?』
 これまたキャスティングミスな声優が現れた。棒読みな明天先生とは真逆の、ノリノリで妙に抑揚がある男性の声。きっと想像するに、ここにはいない木星の化身と言われている先生なのだろう。この映像は、本当に先生達の自主制作らしい。
『実は歳蔵君に聞いて欲しいことがあって呼び出したの。わたし歳蔵君の事が好きでした。気持ちを受け取って』
 明天先生の声が急に低くなり、冷めた棒読み口調に変わった。よっぽど木星の先生が嫌いなのだろうか。あまりに淡々とした告白のセリフに、とてもじゃないが感情移入出来ない。……始めから出来ていないが。
 アニメーションのゆうこちゃんは手に持ったビー玉、二つの淡い光を抱く恒光石を、としぞうくんの前に差し出す。
 そしてゆっくりとセリフを続けた。
『あなたへの気持ちを証明するために私は恒光石の名を呼んで空に打ち上げるわ。ズベン・エル・ゲネビ。ズベン・エル・ハクラビ』
 名前を呼ばれた恒光石は突如として眩い光を放ち、夜空へと一直線に飛んでいった。
 すると今度はとしぞうくんも手に持った恒光石を二つ、ゆうこちゃんの前に差し出す。
『ゆうこちゃんの気持ち、受け取った。凄く嬉しかったよ。僕も、君の気持ちに答える。一緒に星を結ぼう。ズベン・エス・カマリ! ブラキウム!』
 同じく光を放つ恒光石は夜空に打ち上げられた。そして四つの星と星の間に、うっすらと光の線が架かる。少しいびつな長方形型だが、そこにははっきりと星座が浮かんでいた。
『やったよ、ゆうこちゃん! 僕らの愛が星を結んだ! そうだ。あの星座を天秤座と名付けよう! 僕らの愛はいつまでもどちらが過不足することなく、平等で均衡であり続けると誓う! いや! そんな秤なんて壊れるくらいの大きな愛を築いていこうじゃないか!』
『そうですね……』
 いやに能弁な気障男と既に冷め切っている女の、全く絵と合っていないラストシーンを見せられて、画面にはエンドの文字が浮かんできた。あまりのちぐはぐさに一同、声も出ない。校長ただ一人が拍手を送っていた。
 
 なんとも飲み下せない感情が胸に渦巻いていたが、分かったことが二つあった。
 『星乞い』とは生まれて初めて誰かを好きになること。そして『星結い』とはつまり、好きな相手にその思いを打ち明けることなのだ。恒光石を空に打ち上げるのは、愛の証なのだろう。そして思いが通じ合った時、夜空に輝いた恒光石は線で紡ぎ、星座となる。
 始業式前にともえちゃんが私に言った言葉、鎌田君と星を結べればいいね、だなんて。今にしてみれば知らなかった方が幸せだった気がする。ロマンチックというには、この小さな心と体では捉えきれないほどあまりにも壮大で、私はただただ茫然とするばかりだった。

 そんな呆ける私をよそに、終わったとばかり思っていた映像には、またもや大きな赤文字が浮かぶ。「レッスン2。星結いの作法」
 ……まだ、あるの?



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06:41  |  星乞譚  |  CM(0)  |  EDIT   このページの上へ

2010'06.20 (Sun)

私の星乞譚。 第一章

 桜のつぼみも徐々に芽吹き始め、木々を揺らす風が頬に当たり気持ち良い。このままの快晴が続けば、三、四日後にはこの桜並木も満開を迎えるだろう。その頃にはどうか風も弱まってくれれば良い。せっかく満開を迎える桜の花びらが散ってしまっては残念だ。そんな願いを込めて空を見上げる。蒼穹、今日のこの日に相応しい天気に私は目を細める。
 受験発表の時以来になるこの校門を潜り抜け、卸し立てのセーラー服に身を包んだ私は一旦歩みを止めた。まだ新築といった外壁の汚れが感じられない校舎に、ガラス張りの体育館。そしてこの学校一番のシンボルとなる巨大な望遠ドーム。天守閣のように校舎の頂に設置されたそれを眺めながら、私は期待と歓喜を込めて小さく息を吐いた。
ここが天野市に唯一存在する私立高校、創天高等学校。私、酒留心恵が三年間通うことになる学び舎だ。
私はしばらくの間、校舎を眺めながら立ち止まっていた。そして肩に掛けていた鞄をゆっくり降ろし、軽くお辞儀をする。これからお世話になる学校へ挨拶のつもりだったのだろうが、自然とそんな行動を取ってしまった自分にハッとした。校門の前で学校に向かい頭を下げている女子。周りから見ればさぞかし滑稽に映っただろう。
 私は頬を染めながら、今の姿を誰か知人に見られはしなかったか、辺りに目配せをする。すると、丁度背後から誰かが小さく吹き出す音が聞こえた。
 しまった! と思い振り返り、私はさらに赤面する。
 そこにいたのは男子学生、私と同じ新入生の男子学生だった。それが誰なのか、瞬時に脳が反応すると同時に、胸が微かにコトリと鳴る。
 その男子学生は控えめな笑顔を真っ直ぐに私へ向けて、軽く唇を動かし声を掛けてきた。
「おはよう、酒留」
 鈴が鳴ったようにコロコロと、だけど落ち着いた低い声が私の胸に響く。その声がスッと心に解けると、私の心臓はもう一度コトリと鳴った。今度はさっきよりも強く、そして速く……。
 清々しい微笑みを浮かべた彼に挨拶を返そうと口を開くが、胸の鼓動が邪魔をして上手く言葉を紡げない。たった簡単な一言がどうしてもいえなく、もどかしくて仕方なかった。
 そしてまごつく私に気にすることなく、彼は隣を抜けて行ってしまった。すれ違う一瞬、鼻腔を衝いた彼特有の爽やかな香りが、また意味もなく胸を締め付ける。私は昇降口に吸い込まれていく彼の後ろ姿を、高鳴る胸の鼓動はそのままにいつまでも見送っていた。

 そんな私の肩を急に誰かが叩いたので驚いて飛び上がる。またもや気付かないうちに背後に立たれて、誰かと思い振り返ると、その人は口に手を当てて上品に笑っていた。
「おはよう、心恵ちゃん。あんまりボーっとしているから可笑しくなっちゃった」
 真っ直ぐサラサラな髪を掻き分けながら、その女子学生はにこやかに微笑んでいる。
「うぅ……。おはよう、ともえちゃん」
 彼女は大山ともえ。私とは小学校の頃からの幼馴染だ。この町では大きな呉服屋を営んでいる裕福な家庭のお嬢様だが、そんなことは全く鼻にかけた様子はなく、いつも気さくに誰隔てなく声を掛けてくれる。その姿が彼女の上品さを更に際立たせた。
 ともえちゃんは一度だけ昇降口に視線を向けると、口を開く。
「先に私へ言っちゃって良かったの? おはよう、って」
 なんの事か分からず小首を傾げる私に、ともえちゃんはちょっと意地悪そうに小さく舌を出した。
「高校に入って初めてのおはよう、を鎌田君じゃなくて私に言っても良かったの?」
 私はその一言と彼女が口にした彼の名前を聞いただけで、一瞬にして耳まで真っ赤になる。
「と、ともえちゃん! み、見ていたの!」
「えぇ、後ろのほうからずっと。気付かなかった?」
 私は羞恥に身を悶えさせながら、いまさっきの男子学生に挨拶を返せなかったことを、心の底から後悔した。するとそんな私の姿が段々と可哀想に思えてきたのだろう。ともえちゃんは細く滑らかな指で優しく私の頭を撫でてくれた。
「大丈夫。これからは鎌田君と一緒の学校なのだし。おはようって言える機会なんていくらでもあるって。中学や小学校の時とは違うのだから」
 ともえちゃんから慰められて、少しずつ落ち込んでいた気持ちが立ち直ってくる。そうだ、高校からは同じ学校に通えるのだ。小学校や中学校の時のように、男子と女子で学校を区分されることはもうないのだ。
 私が気を治めてきたのを見計らって、ともえちゃんが頭を撫でてくれていた手を私の右手に滑りこませる。
「だから、行こう?」
 彼女が軽く引いてくれた手を、私は微笑みを浮かべて握り返した。そしてその手を繋いだまま、二人で仲良く昇降口へと向かった。

 一年生専用の下駄箱を探し、真新しい内履きへと履き替えて、私達はそのまま始業式が行われる体育館へ向かう。自然と流れていく人の波に合わせて歩いている途中に、ともえちゃんがこっそり耳打ちをした。
「鎌田君と同じクラス、なれるといいね」
 耳にかかった彼女の吐息以上にくすぐったい彼の名前を聞かされ、私は身をくねらせながら、ともえちゃんに耳打ちし返した。
「ともえちゃんとも、ね」
 秘め事を分かち合うようにクスクスと声は立てずに笑う私達。浮き立つ足と弾む心はそのままに、新入生で溢れかえった体育館に足を踏み入れた。
 その時、ともえちゃんがさっきよりも更に声を潜めて私に囁きかける。
「もう私達も高校生なのですもの。心恵ちゃん、鎌田君と星を結べたらいいね」
「ほ、星を結ぶ……?」
 また、ともえちゃんの口から出た彼の名前にドキリとしながらも、彼女が口にした言葉を復唱してみた。星を結ぶ……何かの比喩表現だろうか。あまりに要領を得ていない私の表情を訝しんだともえちゃんは、長いまつげをしばたかせながら尋ね返す。
「心恵ちゃん、星を結ぶって知らないの?」
「う、うぅん。それって何かの流行り言葉?」
 あまりにも真面目な顔で私を見ているので、不安に感じながら問い返した。正直なところ、私は世間一般の流行に疎い。お父さんの影響からか、テレビはドラマよりも野球中継ばかり映しているし、女の子がよく好んで読んでいる雑誌よりは、文芸小説のページをめくっている時間の方が確実に長い。だから時々、ともえちゃんが口にする言葉がわからず聞き返す場面があるので、今回もその類かと思っていたが、真顔で見つめる彼女から察するにどうやら違うらしい。
 私は若干とまどいながら恐る恐るもう一度「星を結ぶって……何?」と尋ねてみた。すると彼女はハッと我に返るといつもの品のある微笑みを繕った。
「ま、まぁ。私が説明をするよりも、きっと先生達から直々にお話があると思うわ、うん」
 私はますます困惑する。先生から聞かされるような重要な話なのだろうか? そしてともえちゃんの口ぶりからすると、私以外の学生はほとんど知っているみたいだ。
「ね、ねぇ。ともえちゃん、それって知っていないと困っちゃう? みんな知っていることなの?」
「い、いえ。別に知らなくても困ることじゃないのよ。人それぞれっていうか、個人差っていうか……。ただ私、心恵ちゃんは知っていると思って。だって鎌田君を……いいえ、何でもないわ」
 またもや彼の名前が出てきて私の不安は更に膨れ上がっていく。もう居ても立ってもいられず彼女へ問い質そうとしたその時、体育館に始業式開会を告げるアナウンスが流れる。私達は整列されたパイプ椅子に腰を掛けるよう教師達に促され、話しはそれっきりになってしまった。
 ステージに上った教師が開会宣言をする直前、ともえちゃんは「後でゆっくり教えてあげるから。ごめんね」と囁く。それから約一時間、始業式が催されている最中、たくさんの偉い人が次々とステージの演台で祝辞を述べていたが、私はそんな話など全く耳に入らず、ともえちゃんの言葉だけをいつまでも頭の中で繰り返していた。

更新日 6月24日

 私にはともえちゃんとは別にもう一人、幼馴染がいた。それが鎌田雅士君だった。
家も近所で学年も同じな私達は、物心ついた頃から三人で遊び、小学生になって女子校、男子校と離れ離れになっても休日は公園で走り回っていた。中学生になり、もう公園で遊ぶ歳じゃなくなっても、家が雑貨屋を兼用した酒屋を営んでいたためか、よく買い物に来ていた彼と交流を重ねていた。子供の頃のように無邪気に語り合ったりはしないものの、私がレジをしてお釣りを数えている間、彼は学校のことをぽそぽそと話していった。そんなごく何気ないことが日常だったし、特別に意識したときもなかった。
 だけど、それはいつからだったろうか。通学路の信号を渡るとき、授業中に窓の外の景色を眺めていたとき、夕飯の後に勉強机へ座ったとき、湯船に浸かって上っていく湯気を眼で追っていたとき、夜に布団へ入って眠りに落ちる数瞬前に、彼の顔を思い描くようになっていた。そして店番をしているとき、彼が買い物へ来てくれないだろうかと無意識に願っている自分に気付き、胸の鼓動がのんびりと、だけど力強く、鳴った。
 意識してしまった瞬間に、ようやく私は自分の心や体や魂や意識が全く別のものに変化していたことを思い知らされた。心も体も魂も意識も、全てはその一人の男性に真っ直ぐ向かっていることに気付かされ、そんな新たな発見に驚愕よりももっと鮮明な温もりがあることを知った。
 それは本当にいつからだったのか、わからない。私の思いは感知できないほど緩やかに、けれど星が日を追うごと宇宙を巡る速度で着実に増していった。
 一度意識してしまってからは、もう毎日がパニックだった。すれ違うはずもない通学路で風にあおられた前髪を必死に直したり、休日にともえちゃんや他の友人と遊びに出かける時はいつバッタリ会っても困らないよう、おしゃれには細心の注意を払ったり、それまで嫌がっていた店番をすすんで申し出て親から不審がられたり。私の体中は鎌田君で埋め尽くされてしまっていた。
 だから店番をしていて鎌田君が買い物で訪れた時には、まるで天変地異が起きたかのように内心大慌てだった。まともに目も合わせられず、声も出せず、手は震えるばかり。それでも気持ちだけは完全に鎌田君に向いていて、この思いが体から飛び出して彼に気付かれるのではないかと心配で、ただずっと下を向いて息を止めていた。
 
 この思いは親友であるともえちゃんにしか打ち明けていない。要領がまとまらず散文的な内容だけど、ともえちゃんは笑わずにしっかりと話を聞いてくれて、最後ににっこりと微笑んで「おめでとう」と応援してくれた。
 そして小学、中学と女子校の期間も終え、鎌田君と共学の高校へ入学する夢は叶えられた。この三年間のうちに、私は鎌田君へ自分の思いを伝えたいと誓った。
 だけどそんなどこにでもありふれている些細な願いが、壮大な物語の一つへと組み込まれていたなんて、私は世間というものを本当に知らない女の子だった。



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05:03  |  星乞譚  |  CM(0)  |  EDIT   このページの上へ

2010'06.19 (Sat)

落ちました

皆様、お久しぶりの要人です。

題名にもあるように、落ちました。

とある小説大賞に応募していた作品が、見事に一次選考で落ちてしまいました。


……あぁ、マジでガッカリです。なまじ自信があったばっかりに、心底落ち込んでいます。

一次選考を突破出来ない作品なんてね、文体がおかしいか作品全体のバランスが悪いか、

レーベルのカラーに合わないか、とにかく小説として頂けない内容らしいんですよ。

だから本当は改稿して他の大賞に応募しようかとも思いましたけど、諦めが悪いのでスパッと断念します。


ということで、来週の月曜日から復活します!

一次選考すら通らない作品ではありましたが、渾身の出来栄えだと私は思っております!

なので、是非読んでください!

ジャンルは純愛もの! 「初恋」をテーマにした純愛ものですよ!

29歳手前のオッサンが力振り絞って、甘酸っぱい話を恥ずかしげもなく書き綴ってやりましたよ!

自分で書いた作品で自分で読んで、軽く「ウルッ!」ってくるほどの失態っぷりですよ!

この歳になって未だに黒歴史を刻み続けますよ! ちくしょー!


そんな作品ですが、是非読んでみて下さい。

題名は「私の星乞譚。 ~孤独なライオンと小さな王~」です。お楽しみに♪




……あぁ! 本当に落選くやしい! 次こそは! 次こそはーー!!!!

あ、もう一つに別の大賞に応募したのがありました。たぶん来週に発表かも。
09:57  |  その他  |  CM(3)  |  EDIT   このページの上へ

2010'06.07 (Mon)

あとがき


長かった……。自分で書いといてナニですが、長かったです……。
この度は「なんしきっ!」を最後までお読み下さいまして誠にありがとうございます。400字詰め原稿用紙に換算すると約750枚近くになるであろうこの作品。十二月から当ブログで掲載し始めて早、半年が経ってしまいました。長かった……。
どのくらい長かったかというと、掲載中に娘が産まれたくらいです。長かった……。
私、もともとは中学生にソフトテニスを教えていた経緯がありまして、その時の経験が今回の作品を手掛ける材料になりました。中学生って本当に多感で敏感な年頃で、どうやって接するのが一番良いのか毎日悩んでいました。私なんて週に何度か顔を合わせる程度でこれだから、学校の先生ってもっと何十倍も大変なんだろうな、とつくづく感心してしまいます。
それでも生徒達とテニスをしているのは楽しかったです。段々と上達していく姿を眺めては嬉しくなったり、試合で負ければ本人達以上に悔しがったり。今は娘も産まれてしまい子育てにてんてこ舞いなので忙しいですが、落ち着いたらまたテニスを始めたいです。
さて、今後は掲載する予定の小説も特にないので、当ブログはしばらくお休みとなります。ただいま二つの新人賞に応募中なので、途中経過の報告くらいは載せるかも、です。
(今月に一次選考発表なので、もしも落ちたら掲載するかも……)
それでは、またお会い出来る日を楽しみにしています!最後に、小説を読んで頂き励ましのコメントを下さった皆様、本当にありがとうございました♪

要人(かなめびと)




もくじはこちら


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13:28  |  なんしきっ!  |  CM(6)  |  EDIT   このページの上へ

2010'06.01 (Tue)

明日へ向けて

 茜色の空が川の水面に反射してキラキラと眩しい。佐高市を形作る荘内平野の中央を流れる北前川は、悠然とその流れを海原に向けて下っていく。日本屈指の急流と証される北前川は梅雨の時季になれば修羅のように姿を変えるが、晴れ間が続く昨今は大人しくサラサラと流れていた。その北前川に架かる鳥海大橋の歩道橋を渡る自転車の群れ。西日に伸びる影が六つ。
 その中の一台の自転車に乗った少年が、学校指定のヘルメットを外すと無造作に籠へ放り入れた。
「あぁー! ちくしょう! なんでこんな暑苦しいメット被ってなきゃいけねぇんだよ!」
 いかにも我慢弱そうな少年へ、一番先頭を走っていた肥え太った少年が咎める。
「規則に従いたまえ、高田君。もしもヘルメットを被っていない第七中生徒が近隣住民から見つかったら、真っ先に我々が疑われるだろうが。そうしたら必然的に市議会議員である僕のお爺ちゃんに迷惑がかかることになると思わないのか?」
「思うわけねぇだろ。なんで俺がいちいちデブの爺さんの事なんか気に掛けなきゃいけねぇんだ」
「君は宗方繁蔵が何たるかを知らないからそんな態度でいられるんだ! よかろう! ではまず始めに僕のお爺ちゃんが齢三十五歳で初めて市議会議員に当選した時の話から聞かせようか! それは大晦日が開けたばかりの冬、その年はちょうど豪雪と言われた年で僕のお爺ちゃんはスコップ片手に……」
 本人しか興味がない英雄譚を語り出した部長に、一同突っ込みを入れる体力も無く黙って聞き流す事にした。いつもなら苦笑いを浮かべながらも話を聞く振りをする相方である丸藤も、すっかり体力を消耗仕切ったのかげんなりと反応を示さない。他のメンバーも同様に応援やらで疲弊した体を感じながら、今日一日の戦果を胸の中で反芻する。さっきからもう何度となく思い返しているが、決してし尽くす事の出来ない一日だった。
 そんな中、殆ど一日中応援に徹していた巨漢の吉川が、背格好に似付かわしくない声で呟く。
「でもさ……今日はみんな、凄く頑張ったと思うよ? 特にみやちゃんとさくちゃんは、ね。最後の試合なんか、我を忘れて応援してたもん」
 少し離れた位置にいる神谷はいつもの無表情で何も言わず自転車を漕いでいる。たぶん今日一番体力を消費しただろう彼は、こうしてみんなと一緒に帰れるだけでも奇跡だろう。そんな神谷の替わりに、吉川の隣で併走していた小堺がガラにもなく落ち着いた声で答えた。
「それでも結局、負けちまったら意味ねえよ」
 その一言で一同はグッと口を噤むが、すぐにそれまで押し黙っていた神谷がギリギリ全員に伝わる程の声で一人ごちた。
「ファイナル、ほとんど一本も取れなかった……」
 西日で真っ赤に染まった少年達は、準々決勝での神谷達の試合を思い出した。僅か二時間ほど前の事だったが、今でも輝ヶ丘テニス競技場に居るかのように、あの試合を鮮明が甦る。

 唸るような両陣営の観客に見守られながら、第1コートで対峙する神谷達と黒田達。あの第四中一番手である彼らが一年生ペアからファイナルゲームまで追い詰められようとは、誰しもが予想しなかっただろう。コンビの結束力の屈強さと奇抜な試合展開で翻弄する神谷&小堺ペア。王者としてのプライドと圧倒的な技術の差で引き離そうと奮闘する黒田&角野ペア。今や第七中優勢なムードでファイナルゲームを迎え、コートをぐるりと囲んだ人垣はもしや一年生ペアが盤石を覆すかと、むしろそれを心の底で期待しながら次の展開に目を離せなかった。
 だが、神谷のスタミナは既に底を打っていた。第六ゲームにサイドへ疾走したあの一本が限界で、もはや体力を復活させる時間も原料もなく、ファイナルゲームは観客がガッカリするほど呆気なく終わった。そのあまりの呆気なさに本人達も悔しがるわけでもなしに、ただ茫然と試合終了の礼を交わしただけである。

「で、でもさ。結局黒田さん達からゲームポイントを取れたのって、神谷君達だけだよ。それって相当凄い事だと思うんだ」
 二人を励ますようにわざわざ自転車を寄せながら丸藤は言った。実際のところ、個人戦で優勝した黒田達は団体戦も含めて神谷戦以外は1ゲームも落としていない。それどころか彼らをファイナルゲームまで追い詰めた今大会のダークホースは各学校の顧問やコーチ連中から、佐高市内で実質ナンバー2という高い評価を受けていた。他の入賞した選手達には申し訳ないが、あの準々決勝が今大会の事実上決勝戦だったといっても過言ではない。不幸にも彼らが公式戦で対戦する機会が今後ないかもしれないという事が残念でならないが、これからの二年生や一年生には神谷と小堺が良い刺激となり、目標となるだろう。
「これからは、みやちゃんとさくちゃんが追い掛けられる番だね。僕達も早く二人に追い付けるように頑張らなくっちゃ。ね、たっちゃん?」
 同意を求められた高田も「おうよっ!」と応える。
「俺達もこれからはもっと必死こいて練習して、いずれはお前らを下してやるからな! うかうかしてんじゃねぇぞ! まずは豚、丸男! お前らからだ!」
 未だにうっとりとしながら誰も聞いていないのに祖父の英雄譚を語っている宗方は高田を無視し、丸藤は「……丸藤です」とボソッと答えるだけだった。そんな反応の薄い二番手ペアに憤慨したのか、高田はギャンギャンと喚きながら小堺に突っかかっていく。
「なんだよ、どいつもこいつも! 俺らが素人だからって馬鹿にしやがって! そうやって余裕ぶっこいてると足元すくわれっからな! 小堺、てめえもだ! 何をしけた面してんだ! 似合わねぇんだよ!」
 さっきから火が消えたように元気のない小堺が気に食わないのか、高田は足で軽く自転車のカゴを蹴る。
「ちょっと、高田君! 危ないじゃないか! 小堺君も嫌なら嫌って言いなよ!」
 注意する丸藤をよそに、小堺はなおも明後日の方角を眺めている。負けた事がよっぽどショックだったのだろうか、殆ど放心状態の小堺が不気味過ぎて吉川がおずおずと自転車を寄せる。
「さくちゃん、負けて悔しいのは分かるけどさ、元気だそうよ。僕達、まだ一年生なんだし始まったばかりじゃん。だからさ、落ち込まないで、ね?」
 吉川の言葉に目を丸くする小堺。
「何言ってんの? 俺は別に落ち込んでなんかいないぞ」
 その素っ頓狂な言い方に全員が口をあんぐりと開けて固まる。
「……えっ?」
「だからっ! なんで落ち込まなきゃいけないんだよ! 俺がそんなタイプに見えんのかぁ?」
「えっ……だってさくちゃん、いつもより元気がなかったから。試合に負けて悔しいのかな、って」
 吉川にそう言われると、小堺はバツが悪そうに頭をバリバリと掻いておずおずと答えた。
「そりゃあ、負けたのは悔しかったけどよ、だからって落ち込みはしないぜ。たださ、今日の試合を思い出していたんだ」
「試合の、こと?」
「おう。今日の試合でさ、自分でも不思議なくらい体が動いていたな、って。まるで自分の体じゃないみたいな、変な感覚だった」
 妙な事を語る小堺だったが、話を聞いていた丸藤も同調する。
「それ、僕も分かるよ。小学生の頃はそんな感覚なかったんだけど、宗方君と組んでいたからかな? 何の気兼ねもなくテニスが出来たっていうか、宗方君とだから迷いもなくプレー出来た、みたいな……」
「そうそう、そんな感じ! 小学生の時に組んでいた奴だって悪い奴ではなかったけど、しっくり来なかったっての? ペアを気にしちゃって上手くやれなかったんだ」
 中学に入ってからテニスを始めた高田と吉川には今一要領を得ない話だった。経験者ならではの感覚なのだろうが、仲違いの末に勝てるはずだった試合を落とした今日の事を思い出すと、なんとなく理解できる。始めは上手くいっていたのに、気持ちが行き違った瞬間にフォームもバラバラになってボールが全くコートの中に入らなくなってしまったのだ。
「詰まるところ、君達は互いの実力を存分に引き出せるほど馬があったペア、ということか」
 それまで誰も聞いていないのに延々と祖父の話をしていた宗方が話に加わってきて、何だかもっともらしい事を言うので一同溜まらずに吹き出した。
「なんだね君達! 失敬だな! 丸男君、我々もかくあるべくようになろうじゃないか!」
「ハハハ。うんうん、そうだね」
 眼鏡をたくし上げながら朗らかに答える丸藤を見て、宗方は納得したように頷く。
「ということは、やっぱり俺と正樹の愛の力ってことだな! 結論から言うと!」
 またもや冗談なのか本気なのか分からない台詞に、チームメイトは言葉を詰まらせる。小堺が言うのなら本気なのだろうが、どんな意味合いで本気なのか詮索する勇気がある部員は残念ながらこの中にいなかった。

 話を逸らすように高田が神谷に自転車を寄せると声を掛ける。
「お前はどうなんだよ?」
「……愛の力か?」
「違ぇよ! アホか! お前は負けて落ち込んでんのかって話だ!」
 さっきから一言も言葉を発することなく押し黙っている神谷を、やっぱりみんな気にかけていた。小堺はともかく神谷は神経が繊細そうなので、もしかすると負けたことが悔しくて塞ぎ込んでいるのかもしれない。だが神谷は少し考える仕草を見せると、首を横に振った。一同はホッと安堵する。
「じゃあさっきからなんで黙り込んでんだよ? 無口なのはいつもの事だが、話に参加くらいしやがれ」
「……疲れた」
 そう言うと神谷は再び貝のように口を閉ざし、黙々とペダルを漕ぐだけの作業に没頭した。確かに今日一番体力を消費したのは誰であろう、神谷だ。試合の途中に燃料切れになるくらいだから、帰り道くらいはゆっくりさせてあげようと、高田は併走していた自転車をゆっくり下げた。
「悔しがるって言えばさ、一番ガッカリしてたのって美和ちゃんだったんじゃね? 試合直後は大泣きしながら『よく頑張った!』って言ってくれたけど、帰る時に何故だか元気なかったぜ」
 顧問の不審な態度を思い出した小堺が言った。言われてみれば、といった風に全員も最後に見た安西の顔を思い出す。ガッカリというよりは困惑したような様子だった。
「安西先生、何かあったのかな? それとも僕達、知らず知らずに悪いことしちゃってたかも……」
 不安げに眉をひそめる丸藤が可笑しくて、チームメイトは声を殺して笑った。たぶん初恋の相手だろう安西の一挙動に一喜一憂してしまう、丸藤はちょうどそんなお年頃なのだ。
「案ずるな、丸男君。安西先生はその程度の事で表情を濁すような器の小さい方ではない。きっと何か頭を抱えるような別件をお持ちなのだろう」
 本人にしては励ますつもりで言ったのだろうが、事情を知らない彼らは全く違った意味で宗方の発言を捉えてしまう。
「なんでそこまで美和ちゃんをヨイショするんだよ、デブ。うちの二番手は随分と顧問を大事にするんだな、あん?」
「ちょっと高田君! なに馬鹿なこと言うんだよ!」
「そうだ! 無粋な勘ぐりはよしたまえ、この不良少年が!」
「んだと、デブ! もういっぺん言ってみやがれ!」
「ちょっと、たっちゃん止めなよ!」
「ハハハ、いいぞたっちゃん。やれーやれー」
「……寝たい」
 鳥海大橋の歩道橋で戯れる影六つ。少し風が出てきたのか、朱色に染まった水面はキラキラと波立つ。それはまるで、はしゃぐ子供達をはやし立てる拍手をしているようにも見えた。

 輝ヶ丘テニス競技場に隣接された砂利の駐車場に止まる二台の車。一つは大型のRV車でもう一つは茜色に染まり、さらに赤く光る軽自動車。その間に伸びる影二つ。
「団体個人、総合優勝おめでとうございます」
 慇懃に頭を下げる安西の向かい側にいる佐々木もきちんとお辞儀で返す。
「これはこれは、ご丁寧にありがとうございます」
 上っ面だけをみれば爽やかで礼儀正しい男性なのだが、仮面の下に隠された本性を知り尽くした今では何の感慨も湧かない。
「やっぱり佐々木先生には敵いませんでした。でも今回は色々勉強をさせて貰いましたし、私、ソフトテニスが好きになりました」
 悔しい気持ちはもちろん無いわけではないが、それ以上に得たものも大きい二日間だった。生徒達と一緒に笑って怒って、ハラハラしたりドキドキしたり、今までの教師生活で味わった事のないたくさんの感情をもらった。
「安西先生がそう感じて頂けたのならば幸いです。よほど有意義な時間だったのでしょう」
 そう言うとそれまで安西の顔をジッと眺めていた佐々木が小さく吹き出した。
「失礼。安西先生の表情が第七中の生徒そっくりだったもので、つい。先生の子供達は良いですね。みんないつでも瞳をキラキラ輝かせ、決して諦めることをしない」
 それまで朗らかに笑っていた佐々木が言葉を止めると、ため息混じりに
「うちの子供達はどんな顔をしてるでしょう。私のような表情をしているんでしょうか」と呟いた。
「本当ならば今日の試合、黒田達には全戦ゲームポイント0で勝ってこいと指示を出したんですよ。ですが神谷君達にファイナルまで持っていかれました」
 それは随分と無茶な指示を出すものだと安西は思ったが、その学校にはその学校なりの指導理念がある。東北大会まで選手達を引っ張っていくような学校なら、さほど無茶でもないのだろう。
「実力は歴然ながらも懸命に工夫を凝らし勝利への飽くなき強い意志。そしてお互いのパートナーに対する絶大な信頼。どれもこれも我が第四中にはないものばかりで目が眩んでしまいました。安西先生が昨晩おしゃったことの意味が、あの生徒達を見ていて少しだけ分かった気がします」
 だいぶ暗くなってはっきりとは見えないが、ほんの一瞬だけ佐々木が作り物めいた笑顔ではなく、本物の笑顔をしたように見えた。
「あの時は私もだいぶ酔っていましたし……。それにきちんと結果は結果として残してらっしゃる佐々木先生は凄いと思います。だから私が言うのも生意気なんですけど、佐々木先生は佐々木先生なりの指導理念を貫き通していかれるのが良いのかと」
 実際に力の限りぶつかり合う生徒達を目の当たりにして、安西が抱いた率直な感想だ。負けてしまえば全てが終わり、勝者が何よりの正義という世界で、昨晩安西が佐々木に啖呵を切った口上は単なる綺麗事でしかないのかもしれない。佐々木を弱虫で臆病者だと言ったが、建て前をかなぐり捨てて冷酷に生徒と向き合う佐々木を否定した自分の方がよっぽど臆病者ではないか。
「はい、もちろん私は私なりの指導理念を曲げるつもりはありません。批判は絶えませんが、私が生徒に結果を与えていることは事実ですから」
 こっちが塩らしく出たからと言って及び腰になる智将ではなかった。太々しくも胸を張って宣言する佐々木に、安西はいつかとっちめてやると胸の中で決意を新たにする。
「まぁ、今回は私も第七中さんから得ることもありましたし。特に神谷君達には勝負で勝って相撲で負けた、といったところでしょうか? 彼のスタミナが少しでも残っていたら、負けたのはこっちでしたからね」
 その佐々木の台詞を聞いて、安西の頭にある案が閃いた。
「ですよね~。勝負に勝って相撲で負けたみたいなものですよね。だから賭けの方も今回はドローってことで」
「それとこれは話が別です。勝負に勝ったのはこっちなんですから」
 押さえるところはピシャリと押さえる佐々木に、安西は「あぅ……」と呟き、やはり考えが甘かったかと俯いた。
「あのぅ……あんまり変なお願いとか、イヤですよ?」
 ちょうど下を向いていたので上目遣いになりながら佐々木を仰ぐ安西。佐々木は溜まらずに顔を紅潮させると急に落ち着きなくあたふたとし始めた。
(この人、よっぽど私に変な事をさせたいのかしら……)
 そんな事を思っていると、意を決したのか佐々木が咳払いをして改まる。
「で、では……言いますよ?」
「あ、はい。どうぞ」
「ほ、本当に! 言いますよ!」
「(うわぁ……)は、はい! どうぞ、おっしゃって下さい!」
 佐々木の口からか細く消え入りそうな声が漏れる。
「わ、私と……夕飯をご一緒して頂けませんか……?」
 二人の間に沈黙が流れる。まるで少年のように真剣な眼差しの佐々木を、ポカンと口を開けて見つめる。
「……へ?」
「いや、ですから! ご一緒に食事でも! いかがですかとっ!」
 あまりに切迫した口調で佐々木が言うものだから、安西はしばらく状況が掴めなかった。
「え、ご飯食べるだけですか?」
「は、はい!」
「今晩、ですか?」
「はい!」
「そんなのでいいんですか?」
「はいっ!」
 まるで訓練された自分達の選手のようにハキハキと答える佐々木。そんな普通なお願いを言うために、何故これほどまで緊張しているのか不可解でならなかったが、そこで安西はあることを思い出した。
「でも今日はこれから父兄の方々と反省会じゃないんですか?」
「大丈夫です! 断ってきましたから!」
 わざわざ安西と夕飯を食べに行くために大事な会合をパスしたのかと驚いたが、そこまで楽しみなのならば断るわけにはいかないし、賭けに負けたのは自分だ。
「じゃあ、わかりました。ご飯を食べに行きましょうか」
 安西の承諾を得た途端、顔をパァッと輝かせて小さくガッツポーズを決める佐々木。そんなに嬉しいものなのかと思いつつも、安西はハンドバックに入った財布の中身を確かめる。昨晩も飲み会があったし懐具合が心配になったのだ。スポーツをしている男性は予想以上に食べるかも知れないし。
 だが佐々木は慌て手を振ると
「もちろん私が奢ります! レディーにお金を出させるなんて、ましてや安西先生に出させるなんて絶対に駄目です!」
 安西の財布を遮った。
「え? だって私が賭けに負けたんですよ。佐々木先生の奢りだなんて、それじゃあ罰ゲームはそっちじゃないですか」
「いいえ、構いません! 紳士としてそれだけは駄目です!」
 どういうわけか佐々木は賭けで勝った上にお金まで出してくれるらしい。なんだかそこまで言うのならここは佐々木に従っておこうと思い、安西はほくそ笑む。
「それじゃあ、お言葉に甘えちゃっていいですか?」
 なんだかんだ自分に良い結果で終わった地区総体。安西は軽くなった気分にあおられるように、佐々木がエスコートしてドアを開けてくれた助手席に乗り込む。
 文化系で育ってきた安西にとって体育会系の人間は今一要領が掴めない存在だったが、今日一日でだいぶ印象が変わった。
 ……特にご飯を奢ってくれる男性なら大歓迎だ。

更新日 6月6日

 さらさらと流れる北前川を背後に鳥海大橋を下りると第七中の学区内に入る。広大な田園風景の中に十五年程前、突如として出現した大型ショッピングモール。それを皮切りに土地開発は進み、田園の四分の一は新興住宅地へと変わり、生徒数の移り住みによる偏りの影響を受けて同時に建設されたのが佐高第七中学校だった。夜になると漆黒の闇の中に不夜城の如くぼんやりとした明かりが浮かび上がるショッピングモールの周りに点在した住宅地、まるで近代の城下町を彷彿させる佇まいが第七中学区の特徴だ。
 空を写す巨大な鏡のような水田の名残を帯びながら順調に生育している稲穂を抱く田園。その間を縫う農道をのんびりと走る六人の少年達。もう会話のネタが尽きたのか、はたまた試合後に自転車で帰宅という重労働に疲弊したからか、互いに言葉を交わすことなく黙々とペダルを漕いでいく。途中、何台か農作業用トラックとすれ違い路肩に寄って配列を崩したが、行き先へ向かう自転車に渋滞はなかった。
 広瀬新田の神社の脇を抜け、用水路を併走する小さな砂利道を通ると住宅街に突入し、視界は一気に狭くなる。まだ築何年といった真新しい住居の間を網の目を縫うように進んでいく。近所の簡単な家電修理を請け負う田島電気店を右に曲がり、お盆の時期には小さな夏祭りが開催される東州神社を左に曲がると、途端に大きな建物が眼前に広がる。学び舎である佐高第七中にたどり着くと、少年達は言い知れぬ安堵感が胸に広がった。そして正面校門を抜けると一旦自転車から降り、そのまま校舎裏へと続く細い通り道を進んでいく。行き着いたその先は、小高いフェンスで囲まれたテニスコートだった。

 全員無言のまま、特に言い合わせたわけでも無しに到着したこの場所。気恥ずかしそうに頭をバリバリと掻きながら第一声を発したのは高田だった。
「あーっ! なんでみんなしてここに来るんだよ! 各自解散って美和ちゃんが言ってたじゃん! 丸男! お前、なに自分ちを素通りしてんだよ!」
「高田君だって何でこっちの道に来たの。全く逆方向じゃなかったっけ?」
「みんな、学校に何か用事でもあるの?」
「そういうお前は何で来てるんだよ! 吉川んちだって逆方向だろ!」
 全員が全員、恥ずかしい気持ちを隠すようにお互いを責め合っている。もちろんテニスコートに集合する必要など一切ありはしない。だが少年達は見えない何かに導かれるようにテニスコートに集まってしまった。
 散々言い合いをした彼らは次第に口数が少なくなっていき、そわそわとテニスコートを見つめだした。
「お、俺さ。今日は一試合しかしてないからまだ体力が有り余ってるんだよな」
「ぼ、僕も。なんだか肩をほぐしてからじゃないと今日はゆっくり寝れなそう、みたいな……」
「俺も実際クタクタだけどよ、軽く運動しとくのも良いかなって。クールダウンっていうの? やっとかないと調子狂いそうでヤダな」
 お互いを牽制し合うように横目でチラチラ視線を送りながら肩やら腰やらストレッチする少年達。何やかんや言って詰まるところ……
「お前たち、テニスしたいのか?」
 無表情に尋ねる神谷に全員がバツ悪そうに目をそらす。
「呆れた連中だな! 不良コンビはまだしも、小堺君はついさっきまで死闘を繰り広げていたではないか! どこにそんな体力を隠しているんだね? ちょっとはパートナーに分け与えたまえ!」
 部長に窘められて面目ないとばかりに頭を垂れる一番手ペア。そんなチームメイト達を眺めていた丸藤は首を傾げながら呟く。
「みんなテニスがしたいのはわかったけどさ、フェンスを開ける鍵とネットが入っている体育用具室の鍵は安西先生が持ってるんだろ? どのみち無理なんじゃない」
 重要な事に気付かなかった少年達は残念そうにしゅんとなる。
「なんだよ。わざわざここまで来たのに……」
「よじ登ってみるか? このフェンス」
「無理でしょ。それにネットがなきゃ意味ないじゃん」
 がっくりとうなだれるチームメイトを見渡して、部長の宗方はわざとらしく咳払いをするとおもむろにポケットから二つの鍵を取り出した。その見覚えがある鍵に、一同目を丸くする。
「君達の単純な思考などお見通しさ。特別に安西先生から借りてきたよ」
 したり顔で鍵をチャリチャリと振る宗方に、その場にいた全員が歓喜する。
「やるじゃねぇか、豚! それでこそ部長だぜ!」
「フハハ、もっと誉めたまえ、崇め奉りたまえ」
 いつまでも悦に入っている宗方の手から鍵を奪うと、皆一斉に蜘蛛の子を散らしたように駆け出した。
「よっしゃ丸男! 乱打しようぜ!」
「丸藤ですっ! 高田君、シュートだけじゃなくロブも練習しなよ!」
「いいかい、みんな! こうしてテニスが出来るのも僕のおかげだということをゆめゆめ忘れるんじゃないぞ!」
「しつこいぞ、豚! ほら、ネット張るから手伝え!」
「みやちゃん、上げボールくらいなら大丈夫? 無理ならいいけど……」
「大丈夫。深めの球が欲しい時には言ってくれ」
 陽はだいぶ傾き、日没まであと僅か。ボールを目で追える光量が途絶えるまで三十分もないだろう。それでも少年達は一分一秒を惜しむようにがむしゃらに、だが懸命にコート内を動き回る。
 黄昏色に染まったテニスコートに長く伸びる影六つ。戯れる少年達を緑化した桜並木がいつまでも見守っていた。

おわり



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06:48  |  なんしきっ!  |  CM(2)  |  EDIT   このページの上へ
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